Chapter 3

Emacs を使って,文章を書く

目次

目標

  1. テキストエディタ(Emacs)の使い方を知る
  2. 英語や日本語で文章を書いて,ファイルに保存する

3.1 テキストエディタについて

テキストファイル(文字だけからなるファイル,文書ファイル)は, これまでやってきたように cat コマンドの出力をファイルにリダイレクトして作成できます. でもこの方法では,一旦作成したテキストファイルを修正したり,変更したりすることができません.そこで,普通テキストファイルの作成には, そういう編集機能を持った テキストエディタと呼ばれるアプリケーションソフトウェアを使います.

これはワードプロセッサみたいなものですが, ワードプロセッサには文書のレイアウトや印刷の機能が備えられているのに対して, テキストエディタは文書の編集に使う機能が充実しています.

Unix や Linux には,結構いろんなテキストエディタが用意されています. ラインエディタは, まだブラウン管を使うタイプの端末装置が普及していなかった頃(つまり昔!),紙に印字しながらタイプするタイプライタ型の端末装置で使うことを考えて作られています. ed などはプロンプトすら出さないとっても不親切な作りになってますが(しかし,これが Unix のスタイルなんですが), これはこれで使い込めばほかのエディタではできないような凝ったことができます.

ex/vi は Unix/Linux における基本的なエディタの一つです.ex は ed を少しは親切にした感じのラインエディタです. 一方 vi は,ex をスクリーンモード(画面上で編集するモード)にしたスクリーンエディタです.将来 UNIX や Linux を使い込むつもりがあるなら,これらの使い方を覚えておいて損はないでしょう.ちなみに, vi のキー操作は, jnethack というゲームをやると自然と身に付きます(ウソ).

emacs は, この中のエディタで最も高機能なエディタです.このエディタの特徴は自己拡張可能な点にあり,ほとんどの機能が emacs 自体がもつ emacs lisp というプログラミング言語で実現されています.また英語,日本語のみならず中国語(大陸,台湾),韓国語,タイ語など, 多国語に対応しています.xemacs はこの emacs に対して X Window System 関係の機能を拡張したものです.

テキストエディタの種類
ed ラインエディタ,玄人向け?
ex ラインエディタ,基本です.
vi (vim) ターミナル用のスクリーンエディタ
gedit タブが使えるウィンドウモード用のスクリーンエディタ
xedit X Window System 付属のスクリーンエディタ
jed emacs 等似たターミナル用のスクリーンエディタ
emacs ターミナル/ウィンドウ両用の高機能なスクリーンエディタ
xemacs emacs の X Window System 関係機能強化版

ここでは emacs を基本に解説していきます. xemacs の基本的な操作方法は emacs と同じです.

Emacs? emacs?

テキストエディタの Emacs については, ソフトウェアの名前としては「Emacs」です. コマンドとしてタイプするときは,すべて小文字で「emacs」としなければなりません.

Webブラウザの Firefox についても,コマンド名はすべて小文字で「firefox」です.

「コマンド名は小文字にする」というのは,Unixの慣習です. とはいえ,必ずそうしないといけないというものでもありません. 例えば,Rと呼ばれる統計処理ツールは,コマンド名も「R」です.

3.2 Emacs を起動する

3.2.1 Emacs を起動する

emacs を起動するには, ターミナルのシェルから emacs とタイプして改行します. X Window System 上では,emacs は動かしっぱなしにして使うことが多いので, コマンドに & を付けてバックグラウンドで起動しておくことにします.こうすると,emacs を起動したシェルも引き続き使用できるようになります.

emacs を起動する
$ emacs &[Enter]

起動すると,下のようなウィンドウが現れます.ウィンドウの高さは,もっと大きいかもしれません.

emacsの起動直後の画面

3.2.2 メニューバー

Emacsのいろいろな操作は,キー入力によって行うのが伝統です. ですがそれでは,キー操作を覚えるのに何週間もかかってしまいます. 今回の授業では,ファイルを開いたり保存したりする機能は,マウスを操作してメニューバーから選択することにします.

メニュー(1)
メニュー(2)
メニュー(3)
メニュー(4)
メニュー(5)
メニュー(6)

3.3 Emacsのキー操作

3.3.1 修飾キー

上では,「マウスを操作してメニューバーから選択する」と書きましたが, 効率よくタイプしていくには,キー操作が不可欠です. ここで,Emacs でよく使われるキー入力を説明します. なお,メニューバーのメニューには,同じ機能を呼び出すキー操作が表示されている場合があります.

普通,a でも 1 でも [Space] でも打てば, そのまま Emacs の画面に表示されます.[Shift] を押しながら a をタイプすると,大文字の「A」が出ます. ここまでは,シェルの操作と変わりません.

Emacsでは,[Ctrl] または [Alt] を押しながら 別のキーをタイプすると,そのままの文字が出ることなく,特別な働きをします. [Ctrl][Alt] のキーは「修飾キー」と呼ばれます. Emacsの操作を説明するときには,これらは「C-」や「M-」と表記します. それぞれ「Ctrlキーを押しながら…」,「Altキーを押しながら…」だと 思ってください.

キー操作の表記
C-x [Ctrl]キーを押しながらx をタイプする
C-x C-c C-x をタイプした後,C-c をタイプする.あるいは,[Ctrl]キーを押しながらxc の順にタイプして,[Ctrl]キーから指を離す
C-x c C-x をタイプした後,c をタイプする.あるいは,[Ctrl]キーを押しながらx をタイプし,[Ctrl]キーから指を離してから,c をタイプする
M-x [Alt]キーを押しながらx をタイプする
Esc x [Esc]キーをタイプしたx をタイプする
Alt と Esc と Meta

上の表で,[Esc] を用いた操作を紹介しています. [Esc]キーは修飾キーではないのですが, 端末装置によっては [Alt] キーが使えない場合があるので, その代用として使えます.すなわち, 「[Alt]キーを押しながら,何かキーをタイプする」というのは, 「[Esc]キーをタイプした,何かキーをタイプする」というのと同じ動作になります.

[Alt] を押すのに「M-」とはどういうことかというと, Emacs が開発されたころのコンピュータには,Meta キーと呼ばれる 修飾キーがあって,これを使っていたということです. 現在,私たちが使うパソコンは,Meta キーはなく,Alt キーがあるので 代用している,とも言えます. もし授業中に先生が,「メタ x …」とおっしゃったら, 「[Alt] キーを押しながら x をタイプして…」と 操作するようにしてください.

ついでに,「Alt」は「オルト」とも「アルト」とも呼ばれます.Alternateの略です.

3.3.2 最低限,知ってほしいキー操作

Emacs で有用な操作は,キー入力でも,メニューバーでも操作できますが, 以下の操作だけは,キー入力できるようにしておいてください.

最低限,知ってほしいキー操作
操作の中止 C-g

ファイル名を打ち間違えた,日本語の入力や変換がおかしくなった, などのときに,C-g,すなわち, [Ctrl]キーを押しながら g をタイプすると, その困った状態から抜け出すことができます.

ただし,その効果を過信してはいけません.このキーは言ってみれば, 「制御できない状態になったのでブレーキをかける」ようなものです. 間違ったファイル名で保存したとか,変な日本語で確定してしまったとかいった 実害が出てから,ブレーキをかけても,もう遅いのです. (なお,何かトラブルに出くわたとき,「少し前の状態に戻りたい」という機能も,Emacs にはあります.アンドゥを参照してください.)

3.3.3 様々なキー操作*

Emacs には非常に多くの機能があります(メールの読み書きや Web ブラウザにも使えます)が,ここではよく使用するキー操作の抜粋を示します.

キー操作
ファイルを開く C-x C-f
別のファイルを読み込む C-x i
文字入力 その文字をタイプ
一字削除(直前の文字) [Backspace]
一字削除(カーソル上の文字) C-d
挿入/上書き切り替え [Insert]
カーソル移動 emacs におけるカーソル移動
C-pC-nC-bC-f は,それぞれ でもかまいません.
文字列の検索 emacs における文字列の検索
文字列の置換 emacs における文字列の置換
日本語入力の開始・終了 C-\
1行空ける C-o
行末まで削除 C-k
カーソル位置にマークを付ける C-[Space]
カーソル位置とマーク位置の入れ替え C-x C-x
マーク位置からカーソル位置まで削除 C-w
マーク位置からカーソル位置までコピー M-w
削除/コピーした内容を貼り付け C-y
変更取り消し C-_ または C-x u
操作の中止 C-g
ファイルの保存 C-x C-s
名前を付けてファイルを保存 C-x C-w
ヘルプのメニューを表示 C-h ?
info を表示 C-h i
emacs を終了 C-x C-c

3.4 ファイルを作成する

3.4.1 ファイルを開く

ファイルを開くには,メニューバーの「File」,「Open File...」の順に選択してください. (キー入力だと,C-x C-f をタイプしてください.) するとウインドウの最下行(ミニバッファ)に開くファイル名を聞いてきますので,ここで存在しないファイル名を指定すれば,そのファイルを新規に作成します.

ファイルを開く

ファイルを作成する
ミニバッファに「Find file:」と出て,開くファイル名を聞いてくる. ファイルを開く
ここでは file.txt というファイルの作成を行うことにする.最後に [Enter] をタイプ. file.txt を指定する
ミニバッファで何か入力するときは,マウスを触らないようにしましょう.

ファイルが存在すれば,そのファイルがバッファに読み込まれ,ウィンドウの上部に内容が表示されます.今は新規作成なので,バッファ内は空になっており,ミニバッファには (New File) と表示されているはずです.

ファイルを開いた

3.4.2 文章を作成し,ファイルに保存する

試しに,次の内容をタイプしてみてください.間違っていてもかまいません.

A girl and a boy bump into each other -- surely an accident.[Enter]
A girl and a boy bump and her handkerchief drops -- surely another accident.[Enter]
But when a girl gives a boy a dead squid -- *that had to mean something*.[Enter]
         -- S. Morganstern, "The Silent Gondoliers"[Enter]

このバッファの内容をファイルに保存します. 保存するには,メニューバーの「File」,「Save (current buffer)」の順に選択してください. (キー入力だと,C-x C-s をタイプしてください.) ミニバッファに,「Wrote」とファイル名が出ますが,ここではミニバッファに何も入力しなくてかまいません.

ファイルを保存する

バッファをファイルに保存する
バッファの内容がファイルに保存される. file.txt の保存

3.4.3 ファイルとバッファ*

「ファイル」は,Emacs の外で管理されている情報です. 今日作成したファイルは,次の日,演習室の他のコンピュータからでも, ファイル名をちゃんと指定すれば,見ることができます.

一方「バッファ」は,Emacs の中で管理されている情報と思ってください. 何らかの理由で Emacs を終了したり,Emacs が動いているパソコンの 電源が切れたら,バッファの中身はなくなります.

このようにファイルとバッファを分けて管理するのには理由があります. 1文字変更してただちにファイルに保存をしていると,10000文字タイプしたら, 10000回のファイル保存の操作を(オペレーティングシステムが)することになります. これはコンピュータに負担をかけますし,ファイルが保存されるディスク装置の寿命も縮めます. ということで,利用者が自分の判断で「保存する」よう指示するのは,妥当な運用方法です.

とはいえEmacsでは,以下の措置によって,バッファをファイルに 保存し忘れたとき,保存し損ねたときなどにも配慮されています.

3.4.4 バッファとミニバッファ*

Emacs において編集対象のテキストファイルを保持する機構のことを,バッファと呼びます.emacs は同時に複数のバッファを管理することができます.通常はそのうち一つのバッファの内容がウィンドウに表示されています(画面を分割して,複数のバッファを同時に表示することもできます).

また,コマンドやファイル名などの入力を行うときには,カーソルがウィンドウの最下行に移動します.この場所はミニバッファと呼ばれます.

バッファとミニバッファ

3.4.5 既にあるファイルを開く*

いったん Emacs を終了させ,Emacs を起動してください.

先ほど保存したファイルを開きます. メニューバーの「File」,「Open File...」の順に選択してください. (キー入力だと,C-x C-f をタイプしてください.) ここでファイル名として file.txt を指定するのですが,ミニバッファに開くファイル名を聞いてきたら,試しに先頭の3文字 "fil" をタイプしてみてください.

既存ファイルを開く
メニューバーで「Open File...」を選択するか,C-x C-f をタイプする.ミニバッファに開くファイル名を聞いてくる. ファイル名の補完 (1)
fil をタイプする. ファイル名の補完 (2)
スペースをタイプする. ファイル名の補完 (3)
もう一度スペースをタイプする.ファイル名が完成したら [Enter] をタイプする. ファイル名の補完 (4)

ミニバッファにおいてコマンドやファイル名を入力する際,途中まで文字をタイプしたあとスペース[Tab] をタイプすると, 残りの文字を補完してくれます(コンプリーション機能). 補完の結果,コマンドやファイル名が一意に決まらない(候補が複数ある)ときは, その一覧を表示します.

バックアップファイルについて

ファイルを保存すると,そのファイル名の後ろに ~(チルダ)を付けたファイルも作成されます. このファイルは編集前の内容を保存したバックアップファイルです.不要なら削除してください.

3.5 Emacs を終了する

Emacs を終了させたいときは, メニューバーの「File」,「Exit Emacs」の順に選択してください. (キー入力だと,C-x C-c をタイプしてください.)

Emacs を終了する

問い合わせが表示されるとき

ファイルの編集中に,別の方法でそのファイルを修正してしまうと,バッファをファイルに保存する際に問い合わせが表示されます.また,バッファをファイルに保存せずに emacs を終了しようとしたときにも問い合わせが表示されます.問い合わせ自体は簡単な英語ですので,問い合わせにしたがって yn をタイプしてください(yes[Enter]no[Enter] をタイプする場合もあります).

終了確認(メニューバー)


終了確認(キー入力)

3.6 切り貼り(カットとペースト)

「私は今日6時に起きました」という文を「今日私は6時に起きました」に変えたいとき, すべて消してタイプしなおすという手もありますが, 例えば,「私は」を切り取って,それを「6時」の直前に移動したら, 効率よく変えられます. Emacs に限らず,たいていのテキストエディタについている機能で, 一般に「カット&ペースト」と呼ばれます.

ところで,先ほど Emacs を終了したなら,もう一度シェルを使って起動しましょう. Emacs で開くファイルのファイル名は,emacs コマンドの引数で指定することもできます.

ファイル名を指定して Emacs を起動する
$ emacs file.txt &[Enter]

下のような画面が出ましたか?

file.txt を開く

3.6.1 領域を指定する

カット&ペーストの最初の作業は,カットする領域,先ほどの例だと「私は」に当たる部分,これがどこからどこまでになるかを指定することです. ここでは,マウス操作で行います.まず,カットする領域の最初の文字を,マウスでクリックし,ボタンは押したままにしてください.

領域指定を始める

次に,ボタンを押したままマウスを移動して(ドラッグ),カットする領域の終わりの次の文字まで移動します.このとき,領域が灰色がかって表示されるので,どこからどこまでかが分かりやすいと思います.

今回は,4行目全体をカットの対象とします.この場合,5行目の最初までドラッグすると,[Enter]キーをタイプした部分(改行コードと呼ばれます.目には見えません)もカットの対象となります.

領域指定を終える

ここで,マウスの左ボタンを離します.離しても,灰色表示は残ります.「間違えた!」と思ったら,カットする領域の最初の文字からやり直してください.

3.6.2 切り取る(カット)

領域を切り取ります. メニューバーの「Edit」,「Cut」の順に選択してください. (キー入力だと,C-w をタイプしてください.)

カットする

すると,先ほどまで灰色になっていた1行がすべて消えます.

カットされたバッファ

3.6.3 貼り付ける(ペースト)

次に,カットした領域をどこに貼り付けるかを指示します.先ほどの例の「6時」に相当する場所です. ここでは,2行目に貼り付けることにしましょう.なので,2行目の最初の文字にマウスカーソルを合わせて,クリックしてください.

貼り付け先を指定

そして,貼り付けます.貼り付けの方法は,次の3種類があります. 最初の方法は,Emacs に限らず,X Window System の上で動くアプリケーションで使えるので,便利です.

ペーストする

一時的に消えていた行が,2行目に挿入されます.これで切り貼りの完了です.

切り貼り完了

切り貼りは, 「1行」でなくても,「1文字」でも「1語」でも「100行」でも, カットの対象が連続していれば,できます. (逆に言うと,「15文字だけど,真ん中の5文字を除く」というのは, 1回の切り貼り操作でできません.) いろいろ試してみましょう.

貼り付け先を指示するときにドラッグしてしまったら

貼り付け先を指示するときにドラッグしてしまったら,それは, 新たなカットする領域を指定しようとしている,ということです.

このときは,ボタンを離すことなくドラッグを続け,灰色の表示がされない地点に持っていって(カットの最初と最後を同じ位置にします)から,ボタンを離せば, 新たにカットする領域は指定しないことになります. 改めて,貼り付ける場所を指示し,貼り付けましょう.

あわててマウスを離してしまい,欲しくない場所が灰色に表示されたときは, まず貼り付ける場所を指定します. 次にメニューバーでは「Edit」,「Select and Paste」を指定してください. さらにいくつかから選べますが,ここでは上から2番目のを選びます. これで貼り付け完了です. この操作をキー入力でしたい場合は,C-y をタイプして(欲しくないものを)貼り付けてから, M-y をタイプするといいでしょう.

3.6.4 コピー&ペーストをしたいときは

「コピー&ペースト」という操作もあります. これも切り貼りですが,最初に指定した領域を消しません.

操作も,ここまで書いたカット&ペーストの操作のうち,「3.6.2 切り取る(カット)」のところで書いた操作をしないだけで,コピー&ペーストになります.

「カット&ペースト」と「コピー&ペースト」の操作を,箇条書きにします. すべてマウス操作のみです(キー入力を使いません).

  1. 他のところに貼り付けたい領域の「最初」と「最後の直後」を,マウスをドラッグして指定します.
  2. (カット&ペーストをしたいときのみ) メニューバーから「Edit」,「Cut」を選択します.
  3. 貼り付けたい位置にマウスカーソルを移動し,クリックします.
  4. 中ボタンをクリックして,貼り付けます.

3.6.5 他のアプリケーションとのコピー&ペースト

X Window Systemの上での異なるウィンドウの間で,コピー&ペーストが可能です. 以下の場合は,問題なくできます.

Emacs もしくはターミナルの文字列を,Firefox へコピー&ペーストすると,何らかのメッセージが出るか,見たことのない Web ページを見ることになるかもしれません. これは,貼り付けたい文字列を Firefox のアプリケーションが受け取って,特殊な処理をしているためです. ただし,Firefox の入力フォームへ貼り付ける分には,問題なくできます.

3.6.6 Windowsとの違い*

Windows でも,マウスのドラッグで領域を指定して,カットしたりコピーしたり,いろいろな操作ができます.ここでは,X Window System (もしくは Emacs) と Windows との違いをまとめておきます.

3.7 その他の便利な操作

3.7.1 操作を取り消す

直前にタイプした文字列を消したり, 実行した(Emacs の中の)コマンドを取り消したりしたいときは, アンドゥ(Undo)の機能を使うといいでしょう.

メニューバーの「Edit」,「Undo」の順に選択してください. (キー入力だと,C-_ をタイプしてください."_"(アンダースコア,下線)をタイプするには,[Shift]キーを同時に押す必要があるので,C-_ をタイプするには[Ctrl]キーと[Shift]キーを同時に押す必要があります.もしうまくいかないようなら,代わりにC-x u をタイプしてみてください.)

直前の操作を取り消す

アンドゥにより,直前に行った編集作業が取り消されます. 2度,3度と連続してアンドゥの操作をすると,その前,さらに前の状態に戻ります.

取り消しの取り消し?

アンドゥしたのを取り消すこと,いわゆるリドゥ(Redo)は,Emacs でできるのでしょうか?

答えを言うと,「できます」.方法は…

すぐ答えを書くのもおもしろくないので,興味のある人は,探してみてください. そうして,脱線してはまりこむのも,コンピュータの楽しみ方です.

とはいえ,本業をおろそかにしませんように….

3.7.2 別名でファイルを保存する*

バッファとファイル名の対応付けは,Emacs の中でなされています. なので,最初にファイル名を指定して開けば,保存するときにファイル名は聞かれません.

その対応付けを変えたいとき,つまり別のファイル名で保存したいときは, ファイルを開いている状態で, メニューバーの「File」,「Save Buffer As...」の順に選択してください. (キー入力だと,C-x C-w をタイプしてください.) ミニバッファに file2.txt とタイプして,[Enter]をタイプすれば,file2.txt の名前で保存されます. Emacs の中の,バッファとファイル名の対応付けも変更しますので,ファイルを保存すると file2.txt に反映され,file.txt の中身は変わらなくなります.

ファイルを別名で保存する

ファイルを別名で保存する
メニューバーで「Save Buffer As」を選択するか,C-x C-w をタイプする. ファイル名をつけて保存
ファイル名をタイプする.[Enter] キーをタイプすれば,その名前で保存される. file2.txt を指定

3.7.3 文字列検索*

Emacs には強力な文字列検索の機能があります. これは,バッファの中で,指定した文字列がどこにあるかを教えてくれるものです. 単なる文字列検索は,Windows の Word を始め,標準的なテキストエディタに搭載されていますが, Emacs では文字列を最後まで指定しなくても教えてくれるという特色があります. この機能は「インクリメンタルサーチ」と呼ばれます.

文字列の検索は,メニューバーからの操作だとうまくいかないので, キー操作のみで行います.最初に,C-s をタイプしてください. するとミニバッファに I-search: と表示されます.ここに girl とタイプしてください.

文字列を検索する
C-s をタイプする. 検索開始
girl (検索する文字列)をタイプする. girl をタイプ

多分カーソルは1行目の girl という単語の位置に移動したと思います.

A girl and a boy bump into each other -- *that had to mean something*.
A girl and a boy bump and her handkerchief drops -- surely another accident.
But when a girl gives a boy a dead squid 
                -- S. Morganstern, "The Silent Gondoliers"-- surely an accident.

この状態でもう一度 C-s をタイプすると,2行目の girl のところに移動します.

A girl and a boy bump into each other -- *that had to mean something*.
A girl and a boy bump and her handkerchief drops -- surely another accident.
But when a girl gives a boy a dead squid 
                -- S. Morganstern, "The Silent Gondoliers"-- surely an accident.

さらに何度も C-s をタイプすると,ミニバッファに次のようなメッセージが出ます. 「Failing (失敗)」と出ても,もう一度 C-s をタイプすると,バッファの先頭に戻って girl を探し始めます.

同じ文字列を検索する
続けて C-s をタイプする. 再検索
何度も C-s をタイプすると,「見つからない」と出る. girl が見つからない
続けて C-s をタイプすると,バッファの先頭に戻って検索する. girl を先頭から再検索

[BackSpace] キーをタイプすると,探す対象の文字列を,1文字減らします.文字を加えたり減らしたりしながら,ダイナミックに検索できるのが,インクリメンタルサーチの強みです.

3.7.4 チュートリアル*

Emacs には,実際に使いながら使い方を学ぶチュートリアルが用意されています.

チュートリアル

チュートリアルを読むには,メニューバーの「Help」,「Emacs Tutorial」の順に選んでください(キー入力なら,C-h t です). このチュートリアルを読みながら, 指示に従って操作の練習を行ってください.

チュートリアルを読む

3.7.5 フォントの変更*

フォントを変更することで,読みやすくなります.バッファの中で,[Shift] を押しながら,クリックしてください.すると,「Font menu」というのが出ます.

フォント変更(1)

ここで,「Fontset」,「standard: 16-dot medium」の順にクリックしていきます.

フォント変更(2)

すると,文字の大きさが替わります.ウィンドウの大きさも替わります.たいていの人には,読みやすくなると思います.

フォント変更完了

次回 Emacs を起動したときには,また前のフォントになりますので,起動直後に毎回,変更してください.

3.8 日本語を入力する

3.8.1 かんなを起動する

演習室の Emacs では,かんなと呼ばれる日本語の入力方法が使えます.

それでは,シェルから Emacs を起動し,file3.txt というファイル名のテキストファイルを作成します. なお,file3.txt というファイルはなくてもかまいません.ないときは,ファイルを新規に作成します.

Emacs でファイル file3.txt を開く
$ emacs file3.txt &[Enter]

egg による日本語の入力を開始するには,C-\ をタイプします(メニューバーから「Mule」,「Toggle Input Method」を選択してもいいのですが, 日本語入力の開始と終了はよく使う操作なので,キー入力をするほうがいいでしょう). するとウィンドウの下から2行目の左端に “あ” が現れます.

3.8.2 日本語を入力する

“あ”が現れている状態で,ローマ字で日本語の文章をタイプし [Space] をタイプすると,漢字への変換が行われます.入力中の日本語は | .. | で挟まれおり(フェンスモード), 文節の間にスペースが空いています.

eggによる日本語の入力
ファイルを開いた直後.
C-\ をタイプする. 日本語入力に切り替える
ローマ字で文章をタイプする. きょうはいしゃへいくひだ
[Space] をタイプすると漢字に変換される. 今日 歯医者へ 幾 飛騨
C-o をタイプすると文節が伸びる. 今日は 医者へ 幾 飛騨
[→] または C-f で次の文節へ移動する.ここでは2回タイプする. 今日は 医者へ 幾 飛騨
スペースをタイプすると次の候補が出る. 今日は 医者へ 郁 飛騨
もう一回スペースをタイプする. 今日は 医者へ いく 飛騨
もう一回スペースをタイプする.ミニバッファに候補が出る.「6 行く」にしたいので,6をタイプする. 今日は 医者へ 行く 飛騨
[→] または C-f で次の文節へ移動する. 今日は 医者へ 行く 飛騨
[Space] をタイプすると次の候補が出る.これだ. 今日は 医者へ 行く 日だ
[Enter]をタイプすると確定する. 今日は医者へ行く日だ

日本語の入力モードから抜け出るには, もう一度 C-\ をタイプしてください. ウィンドウの下から2行目の“あ”が消えます.

3.8.3 様々なキー操作*

キー操作
日本語入力開始/終了 C-\
漢字に変換 [Space]
次候補 [Space] または C-n または
前候補 C-p または
文節を伸ばす C-o
文節を縮める C-i
次の文節 C-f または
前の文節 C-b または
最初の文節 C-a
最後の文節 C-e
確定する [Enter] または C-l
平仮名に変換 M-h
片仮名に変換 M-k
候補一覧表示 M-s
記号入力など C-^
取り消し C-g
単語登録 M-x egg-toroku-region

3.8.4 記号の入力*

“〒”を出したいときは,「ゆうびん (yuubin)」とタイプしてから, [Space] を何回か押してください.

他の記号類も,その名称をひらがなにして,それから変換すれば, たいてい候補に現れます.

“・”は / (右 Shift キーの二つ左)をタイプしてから, [Space] を何回か押せば,出てきます. 一度変換してしまえば,/ をタイプしただけで“・”が出てきます.

3.8.5 辞書登録*

辞書登録は,現在の利用環境では使用できません.

変換しても一発で出てこない単語で, 自分の名前などよく使うものは, 登録しておくと便利です.

とりあえず,Emacs のバッファに,“なんとかして” その単語を表示させてください. そしてドラッグによりその単語を選択(3.6.1)したあと, M-x canna-touroku-region をタイプし,[Enter] をタイプします.

単語を辞書に登録する
マウスで単語の先頭をクリックし,左ボタンは押したままにする.(キー入力なら,C-[Space]をタイプする.) 栄谷
マウスで単語の終わりの次の文字に移動(ドラッグ)してから,ボタンを離す.(キー入力なら,単語の終わりの次の文字に移動する.) 栄谷
辞書登録コマンドを実行する.(コマンドは一部をタイプ後 [Space] をタイプすれば補完されます.)
M-x canna-touroku-region[Enter]
ローマ字で読みを入力する.このとき,C-\[Space] などをタイプしてはいけない.
辞書登録『栄谷』 読み:さかえだに[Enter]
品詞を選択する.
品詞名 0.人名 1.地名 ...(以下略)

単語をマウスでダブルクリックしても, その部分の選択を行うことができます.

3.8.6 Emacs以外のウィンドウで日本語を入力する

ターミナル(GNOME端末)や Firefox などでも,日本語を入力することができます. ただしそのキーバインド(どのキーをタイプすることで日本語入力モードになり, またそのモードから抜けるか)は,Emacs と大きく異なります.

まずはターミナルを起動します. そして,echo[Space] とタイプしておきます.echo は,引数をそのまま出力するコマンドです.以下,引数に日本語を渡すことを試みます.

ターミナル

ここで,[Shift] を押しながら [Space] をタイプします.(この操作を S-[Space] と書くことにします).すると,ターミナルウィンドウの左下に,Emacs で見た「[あ]」が現れます.これが,日本語入力モードです.

日本語入力開始

では wakayamadaigaku をタイプしてみましょう.「わかやまだいがく」と出ましたか?

「わかやまだいがく」とタイプ

そして,Emacs でやったように,[Space] をタイプします.漢字に変換してくれます.でも間違いですね.(実行環境によっては,「和歌山大学」と一発変換してくれるかもしれません.)

「わかやまだいがく」を漢字に変換

もう一度 [Space] をタイプすると,「わかやま」の候補一覧が出ます.[→] をタイプしして「和歌山」に合わせて…

「和歌山」を選ぶ

[Enter] で確定させましょう.

「和歌山大学」が確定

S-[Space] をタイプして日本語入力モードを終え(左下の「[あ]」が消えます),[Enter] をタイプすると,シェルは「echo 和歌山大学」を実行します.結果として,「和歌山大学」を出力し,また次のコマンドを待ちます.

「echo 和歌山大学」を実行

今度は,Firefox で試してみましょう.ウィンドウの右上(検索バーといいます)で「和歌山大学」を入力することにします. タイプするのは順に,S-[Space]wakayamadaigaku

Firefoxで「和歌山大学」(1)

[Space],「和歌山大学」が出るようにして,変換を確定するために [Enter]

Firefoxで「和歌山大学」(2)

日本語入力を終える S-[Space],そして最後に,[Enter] で検索してくれます.検索結果はこうなりました.

「和歌山大学」の検索結果

日本語入力開始/終了のキー

おさらいですが,Emacs では,C-\ をタイプすれば,日本語入力を開始・終了します. そして,Emacs 以外のアプリケーションでは,S-[Space],すなわち,[Shift] を押しながら [Space] をタイプします.

Emacs 以外のアプリケーションでは,[半角/全角] のキーをタイプしても,日本語入力を開始・終了できます.[半角/全角] のキーは,[Esc] の一つ下にあります. Windows のかな漢字変換に慣れている人は,こちらを使うのもいいでしょう.


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