国立大学法人 和歌山大学

有吉佐和子に読む和歌山の伝統文化

公害問題『複合汚染』・高齢化社会の介護問題『恍惚の人』・民族差別問題『非色』などなど、つねに現代の社会問題に挑んで話題作を世に送り続けた社会派文学者・有吉佐和子(1931〜1984)。生まれ故郷の和歌山について、その歴史と文化と人々の生き方に深い関心をよせて、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』など代表作を残しました。鮮やかに描かれた和歌山の良き伝統と因習、それに立ち向かう人々の姿。有吉文学は日本の社会と伝統文化を考える上で、最適のテキストになるでしょう。文庫本を携えて、その舞台を訪ねてみませんか。

『紀ノ川』新潮文庫(英文版The River Ki 講談社インターナショナル)

江戸時代から明治・大正時代へと、紀ノ川流域に育った花・文緒・華の三代の生き様を通して、近代女性の歩みを考える大河小説。有吉自身の家族がモデルとなり、佐和子は文緒に託されます。川下から上への嫁入りは流れに逆らうのでいけない、水で縁切る川向こうへもいけない−柔らかな和歌山言葉の調べの中に、忘れられた慣習がよみがえります。

慈尊院弥勒堂の乳型

『紀ノ川』冒頭は、まもなく嫁ぐ娘を連れて、女人高野の慈尊院弥勒堂に詣でる場面。安産・産後の無事を祈る民間信仰として、今も実物大の乳房型が奉納されている。(南海線九度山駅より徒歩15分)

妹背山・蛇島

万葉集に読まれた名所の妹背山(かつらぎ町笠田)。花嫁行列の途中にここを通った花は、母の言葉を思い出す。

「いうたら紀ノ川の此方は女(おなご)で彼方(あち)が男や。妹山のある岸から背山へ嫁げば、なお障りがあるもんで、え」。(JR 和歌山線西笠田駅より5分、国道24号線道の駅の近辺)

奥家門前

紀の川市(旧桃山町)の奥医院の門構え。映画になった「紀ノ川」では、主人公の邸宅としてロケ地になった。中世の荘官である一族の本拠地として、武士の館のイメージをいまに伝えている。邸内の見学は不可。

旧和歌山県会議事堂

県会議員から衆議院議員となる真谷敬作のモデルは有吉の祖父木本主一郎である。 1896年に建設されて明治・大正・昭和の四十年余り使われた議事堂は、岩出市根来寺の境内に移築されている(現一乗閣)。

『華岡青洲の妻』新潮文庫

世界で初めて全身麻酔薬による手術に成功して「医聖」と称えられた華岡青洲。母や妻が青洲の人体実験に協力したとのエピソードは、女性が男性に奉仕する美談として教えられてきました。有吉の伝記小説『華岡青洲の妻』は、男の愛を勝ち取るための嫁・姑間の確執として描きベストセラーになります。有吉文学によって、青洲の名は一躍全世界に広まりました。

切手になった青洲

春林軒・青洲の里

青洲の里は、復原病棟の春林軒を中心に遺品の展示館やレストラン・ハーブ園・広場などがある野外博物館施設。火曜休園(JR和歌山線名手駅から徒歩20分、本数が少ないが巡回バスあり)

有吉佐和子記念碑

有吉は1984年に東京都杉並区堀ノ内の自宅で急死した。近所の妙法寺の境内、日朝堂前に記念碑が作られた。(地下鉄丸の内線新高円寺駅より徒歩15分)

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