和歌山大学岸和田サテライトのホームページ。和歌山大学の保有する高等教育機能を活用して、泉州・南大阪地域のニーズに対応した諸種の高等教育及び生涯学習・地域連携事業を実施しています。

ホーム  >  わだい浪切サロン  >  わだい浪切サロン一覧  >  終了【10/18(水)】第96回わだい浪切サロン「植物の機能とヒトの知恵」

終了【10/18(水)】第96回わだい浪切サロン「植物の機能とヒトの知恵」

2017/9/26

  植物は、環境中の無機物・イオン(元素)、主に空気中の二酸化炭素(炭素)、土中の硝酸イオン(窒素)や硫酸イオン(硫黄)から光エネルギーを使い、自己の組織や子供(種子)に必要な炭水化物、タンパク質、脂質などの有機物を作ります。動物はその植物組織・種子を食べ、自己の体や運動のエネルギーとした後に排泄し、環境中の微生物が元の無機物に戻します(物質循環)。

  農耕を始めて以来、ヒトは植物の無機物から有機物を作る能力を高める手助け、すなわち、植物が良く育つ様に肥料や潅水など様々な技術を開発・工夫し、優れた能力を持つ植物種の選抜をしてきました。近年では、味や健康に役立つ植物の機能の解析や向上を図る様になって来ています。今回は、色々な環境ストレスに対応しながら生長する植物の機能とそれを利用しているヒトの知恵(肥料の創造、栽培上の工夫、食品としての機能解明など)を紹介します。

参加無料・申込不要

 

日  時 : 2017年10月18日(水)19:00~20:30

場  所 :  岸和田市立浪切ホール 1階 多目的ホール

話題提供 : 杦本 敏男(すぎもと としお)(食農総合研究所 特任教授)

  クリック!

 

 

 

 

 

終了【10/18(水)】第96回わだい浪切サロン「植物の機能とヒトの知恵」 終了【10/18(水)】第96回わだい浪切サロン「植物の機能とヒトの知恵」

 開催レポート 

参加44

【概要】

今回は、色々な環境ストレスに対応しながら生長する植物の機能とそれを利用しているヒトの知恵について、和歌山大学食農総合研究所の杉本敏男先生がお話しくださいました。

 植物が最初に上陸したのが、緑藻類(海の波打ち際につく藻類)、その後、リンボク類、シダ植物に分かれ、現在では、双子葉植物ができ、双子葉植物の一部が、単子葉植物に進化したと考えられているそうです。

 植物の成長に必要なものは、光・適温・水(弱酸性で、低塩濃度)、必須元素として、水素、炭素、酸素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄微量要素として、塩素、鉄、ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、ニッケル、モリブデンがあり、今後、ケイ素が入る可能性があり、ケイ素は、人間にとっても必要であるのではないかということで、健康食品のコマーシャルなどでも取り上げられているようです。

 植物は、窒素栄養条件に応答し、窒素が不足すると光合成産物を根の伸長に使うため地上部の成長は抑制されるそうです。

 そして、酸素は膜に溶けやすく、容易に電子を奪い活性酸素になり、その活性酸素を分解する機構が葉緑体に備わっており、その一つにアスコルビン酸(ビタミンC)があるとのことです。葉でビタミンCが多いのは、酸素毒性を低減するためであると説明してくださいました。

 硝酸イオンをアミノ酸に変える一連の反応のことを窒素同化といい、窒素ガスを窒素化合物に変えるというものが窒素固定であり、窒素同化過程は、植物が生き残るためには、必要なものであるとのことでした。

 また、植物の特徴は、移動できず、環境に順応しますが、種や品種により適応能が異なり、機能解明により新たな機能を付与できる可能性があるそうです。水が少ない場所での植物(サボテン)は、気孔を夜開けCO2を入れ昼は閉じるそうですが、トウモロコシ、粟、稗などは、C4型光合成であり、二酸化炭素を濃縮する能力をもち、植物が適応しているそうです。

 冬の野菜は柔らかく美味しいのは、人間が、あるいは自然が作り出した低温ストレスに対抗するためであり、凍結防止を行い、細胞質が凍らないようにショ糖などを溜め、細胞の周りが凍って膨張しても壊れず、葉緑体で発生する活性酸素を消去するためにビタミンCを必要とするのだそうです。こうして、葉物野菜はビタミンCが豊富であり、健康にも良く、美味しいということでした。目には見えていませんが、植物は土の中でたくさん努力をしているとお話しくださいました。

 植物は光エネルギーを使い、無機態の炭素、窒素、硫黄から私たちに必要な食料・家畜の飼料を作り、植物は土壌から必要な元素を吸収する能力を持つが、ヒ素やカドミウムなど不要なものも吸収してしまうときもあるので、完璧ではないとのことや、植物の機能は、植物だけで生きているのではなく、環境の中の微生物など、色々なものと助け合い、利用しながら生きているということでした。

 

肥料の歴史において、19世紀に、グアノ(鳥糞石:長年蓄積した鳥の糞)とチリ硝石が、資源としての肥料として、争奪の元となったそうです。イギリスのクルックスが、英国科学アカデミー会長就任演説において、「世界的に人口が増えている。一方で、食糧生産は減少している。来るべき世紀に人類を飢餓から救うには、人知を結集し化学的に空気中に豊富にある窒素をアンモニウムに変える手段を講じるべきである」と演説して、世界的に窒素固定の研究が盛んになり、化学的に作ろうではないかということを提案したということです。

 現在では、肥料は化学的に作れるようになりましたが、同時に環境条件を悪化させており、これからの未来はどうすればいいのかという事は、人々が決めていくことになるとお話しくださいました。

 そして、最後に、あまりにも極端に走るのは良くないのでは、ほどほどが良いのではないかと思いますとおっしゃった先生のお言葉は、今回の講話を通して、偏らない中庸であることの大切さや、100%にこだわりすぎないことの大切さを私たちに気づかせてくれるひとつのきっかけとなったのではないでしょうか。

 

【アンケート】

・とても素晴らしい講義をありがとうございます。すごいボリュームで大変感動しました。これからも、もっと知りたいことがたくさん出てきて感謝します。本当によかったです。ありがとうございます。(40代・女性)

 ・歴史(世界史)上有名な太平洋戦争が、肥料争奪戦だったというのは、大変おどろきでした。あと、現在、安価で普通に使える肥料が発明されるのに、先人達のすごい努力があった事が分りました。(40代・男性)

 ・植物が持つ機能に神秘を感じました。自然は循環して、お互いを支え合ってきているのを再確認できました。何ひとつ無駄がなく、必要なことだと感じました。(50代・女性)

 ・大変、内容は濃くおもしろかったです。深い話の中に、先生の日常が感じられる部分もあり、植物について、再度、学習したくなりました。(60代・男性)

 ・植物も人間以上に生き残る為に、大変な「苦労」をしてきた!と云うことが分りました。(70代・男性)

 

【先生よりご質問への回答です】

1.植物は無機物(肥料)を吸収すると聞きました。
   また、肥料は有機物(肥料)の方が良いという話もありますが、どのように良いのですか。

2.根から肥料を吸収する時、水分と一緒に吸収するのですか。

 二つのご質問には重なる部分もありますので、以下の説明をさせていただきます。

   植物は、根の細胞表層にある取り込み口(根の外から内に輸送する)を持っていて、選択的に(完璧ではありませんが)生長に必要な物質を取り込んでいます(排出することも可能です)。水の入り口(輸送担体)はアクアポーリン(アクア=水の、ポーリン=孔)と呼ばれる全ての生命体が持っているタンパク質です。また、他の無機物質のほとんどはイオン(陽・陰)として取り込まれます。例えばカリウムは一価の陽イオン、リンは2価または1価の陰イオン(リン酸イオン)、窒素は一価の陰イオン(硝酸イオン)あるいは陽イオン(アンモニウムイオン)です。アミノ酸などの有機物を取り込むゲートもあります。

有機物を肥料として土に施与すると、有機物は土壌中の微生物によりゆっくり分解され、無機態(炭素は二酸化炭素、窒素は硝酸イオン、硫黄は硫酸イオン)に変わります。従って、無機態窒素がゆっくり供給される(緩効)ことになります。また、藁などの分解しにくい有機物からなる構造体は土壌の中での酸素の通り道になり、植物の根の生育に良い効果があります。ただ、藁は窒素含有率が少ないので、微生物が藁を分解すると同時に土壌から無機態窒素を取り込むために一時的に無機態窒素の不足(窒素飢餓)が生じる可能性があります。その反面、微生物の呼吸による土壌中の酸素消費が供給よりも過剰になると、土壌が嫌気的(酸素不足)になり有害な硫化水素や有機酸の発生も懸念されます。一方で、藁の炭水化物をエネルギー源とした窒素固定菌が増殖すると、窒素供給量が増えることも考えられます。植物を植える前に与える基肥では、その様なことを考慮して、時間的余裕をもって有機質肥料を与えることが望まれます。

無機肥料(例えば硫安:硫酸アンモニウム)を根の近くに施与すると、土壌の水の中の塩濃度が高くなり、塩ストレスにより根の細胞が傷害を受け、吸水などが困難となり、肥料焼けが起きる可能性が高くなります。一般に、無機塩からなる化学肥料は即効性(土壌内での濃度が施与後一時的に高くなる)で、有機肥料は緩効性(土壌内での濃度が高くならない)です。近年では、化学肥料でも溶出速度を制限した緩効性肥料が作られ、省力化や環境負荷の低減の工夫がされています。植物の様々な肥料成分の必要量は、植物の種類や成育時期により異なります。植物は動物と違い、おなかが空いたと表現出来ないので、栽培する人が葉色の変化を見て施肥量を調節する必要があります。

土壌は、硝酸イオンを保持することが出来ないので、無機態窒素(化学肥料・堆肥)、有機態窒素(堆肥)に関わらず、肥料を大量に土壌に散布すると有機態では微生物により分解されて生成した硝酸イオンが、また無機態(硝酸イオン)はそのまま環境中へ放出され、雨水とともに流亡してしまいます(環境汚染物質になる)。

 

(前回)「災害救助ロボット ~夢の実現に向けて~」(レポート)

(次回)「人と自然が共生した地域づくり~環境ビジネスに目覚めた中国と、お尻に火がついてしまった?日本~」(予告)

「わだい浪切サロン」について・過去の開催

前の記事へ

次の記事へ