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終了【1/17(水)】第99回わだい浪切サロン「否定しないコミュニケーション~子ども家庭支援の実践から~」

2018/1/05

 人が生きていく限り、コミュニケーションをしないわけにはいきません。人の幸せや喜びなどプラスの気持ちも、人間関係のトラブルや心の病気や問題などによって起きるマイナスの気持ちも、すべてがコミュニケーションのなかで起きているととらえることができます。

 私自身は、児童福祉や心理臨床の現場で、おもに子どもや家庭に関する問題行動に対し支援する仕事に携わってきました。

 そんな立場から、支援的なコミュニケーションについてお話しできたらと思います。

 
 
 参加無料・申込不要

 

日  時 : 2018年1月17日(水)19:00~20:30

場  所 :  岸和田市立浪切ホール 1階 多目的ホール

話題提供 :  衣斐 哲臣(いび てつおみ)(教育学部 教職員大学院 教授)

 
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 開催レポート 

参加47

概要】

 今回は、家庭支援の実践から、否定しないコミュニケーションについて、和歌山大学教育学部教職大学院の衣斐哲臣先生がお話しくださいました。

 人の幸せや喜びなどプラスの気持ちも、人間関係のトラブルや悩み、心の病気などによって起こるマイナスの気持ちも、すべてがコミュニケーションの中で起きているととらえることができます。また、人間関係の関わりにおいては、コミュニケーションをしないことは不可能であり、沈黙、相槌、何気ない仕草なども、本人の意図にかかわらず、情報としてメッセージ性をもっており、沈黙であっても、人と人とが出会っているときにはコミュニケーションが行われていると考えることができると話されました。

  先生は、これまで児童相談所と精神科の病院で臨床心理士をされており、児童福祉や臨床心理学的な立場から対人援助に携わってこられました。児童相談所では、虐待や非行、不登校など色々な問題を抱えた子どもならびに家族が来られますが、そこでは問題を巡るコミュニケーションが続いていることが見て取れます。そこに援助者が介入することで、これまでとは異なる問題のない、より望ましいコミュニケーションへと変化していけるような手助けができればと考えてやってきたとのことです。   

 通常の日常生活でも、コミュニケーションにおいて、たとえば「泣く」という行為は、単に個人的に悲しいだけでなく、状況によっては人を強く動かすような力もあり、色々な心のメッセージがあるものです。また、怒りについても同様で、その背景の心情には何らかの不安が存在する。つまり怒りは不安の裏返しであると考えることができます。たとえば、DV夫は妻を力でコントロールしようとしますが、そこに示される怒りは「俺の言うことをなぜ聞かないのか?! 俺を見捨てようとしているのだろう!」という見捨てられ不安の裏返しである場合もあります。それゆえ、怒りをそのままに受け止めてしまうのではなく、相手の心の裏のメッセージを聞きながらコミュニケーションを取るなどの関わる者の間合いなどの重要性を説明してくださいました。

 また、援助専門職にはとりわけ求められる要素ではあるが、援助職に限らず日常の人との関わりにおいて相手を否定しないということの工夫の仕方について強調されました。うまくいかなかったことに対して、相手の非をみつけ批難することは比較的ストレートな感情と思考のおもむくままにしてしまいがちです。そこを超えて、相手の持っているものを尊重し、さらに両者で協力して何とかしていこうという気持ちを持って、良い関係を築くことができるようになれることを目指し、さらにそれを信じることが重要なことであると話されました。

  対人関係に関する理論にバランス理論があります。これは、三者間の関係、たとえば2人の人間と1つの対象(人、物、事実)の間に成立する関係のことです。人間はバランスが取れた安定した状態を望むものです。そして、バランスが取れていない関係は、不安定・不均衡で、バランスを取り戻そうとして見方を変えたり行動したりします。問題を巡って起きているコミュニケーションはアンバランスであるため、それをなんとか変えようという動きを利用しながら、よい変化すなわちよいコミュニケーションへと変えていくことが対人援助であり、対人関係の改善につながります。

  児童相談所の研修でもよく行われるそうですが、相手の気持ちの流れに合わせるジョイニングという過程が大事であると話されました。ジョイニングの秘訣は、援助者とクライエントが良い関係を保ち、目標を共有しやすくすることです。関西では、つかみというのがありますが、ジョイニングにおいても、最初、いかに相手の気持ちをつかめるかによって、その後のコミュニケーションの展開にも違いが生まれ、よい方向に繋がっていくと話されました。

 今回、ジョイニングのワークを行いました。隣に座っている方と、昨晩の夕食の話をすることで相手に合わせるというやりとりを続けます。参加者は、このワークに楽しく入り込み、盛り上がりました。一方的に話をするのではなく、相手の話に合わせることでお互いが聞こうとする姿勢が自然と生まれ、話は広がり、初めての人同士でも親和的な関係になれるという体験をしました。

  また、リフレーミング(ある状況で体験されている概念的、感情的背景や見方を別の枠組みや見方に置き換えること)を行うことにより、全体の意味を変化させることができます。例えば、飽きっぽい⇒切り替えが速い/好奇心旺盛、計画性がない⇒今を大切にする/直感が働く等、クライエントの否定的なフレームを、治療者が肯定的な形に言い換えることで、人は気分がよくなり、否定しないようになったりすると話されました。

  言葉は、コミュニケーションにおいて欠かせないものであり、言葉は人に影響を与え、変える力があります。肯定的な言葉は人に力を与え、否定的な言葉は人から力を奪っていきます。その説明を聞いて、私たちは、自分の使う言葉に意識的であることが大切であると感じました。

  スライドに、アン・サリヴァン先生の唇を読むヘレン・ケラーの写真が映し出されました。盲聾唖の三重苦を持ちながら、サリヴァン先生との出会いによってコミュニケーションの手段を見いだした、あのヘレン・ケラーです。サリヴァン先生は、愛情を持って、気持ちに寄り添い、諦めずに、ヘレン・ケラーの内に秘めた能力を引き出しました。この二人をモデルにした「奇跡の人」という映画がありますが、この「奇跡の人」とは、ヘレン・ケラーはもちろんですが、それを引き出したサリヴァン先生のことを表しているという話も聞きました。声として発せられる言葉だけではなく、コミュニケーションとして互いに分かち合える言葉(手段)を共有できることの大切さについても触れられました。

  以上、とくに児童福祉現場の体験をもとにしたお話は、問題や困難を抱えた子どもや家族が陥っているマイナス感情や否定的なコミュニケーションに働きかけていくという対人援助の専門的なものでしたが、とてもわかりやすく聞くことができました。それは、誰もが経験している身近な人間関係に置き換えることができるお話でもあったからだと思います。

つまり、身近にいる人や家族は、かけがえのない存在であるはずですが、ついトラブルや争いになったり、疎遠な関係になってしまうことはあります。その際に、いかに相手のことを否定することなく寄り添い、相手の言葉と言葉以外で表現している気持ちも含めて、否定しないコミュニケーションを行うことができるか。身近な人間関係ほど難しいことかもしれませんが、今回のお話を聞いて、自分の家族や周りの人との人間関係についても考える機会となりました。

 

【アンケートより】

・沈黙もコミュニケーションだというのは、今まで考えたことがなかったので、これからはそこも考えていきたいと思いました。(40代・女性)

 ・初心に返った気持ちで聞くことが出来ました。精神障害者の作業、支援、援助の仕事をしているので、対話の仕方、工夫について考える機会でもありました。否定しない、否定になりそうなことは理由を伝えて角をたてない、気持ちに寄り添うことも大切なことだと改めて考えるいい機会になりました。仕事に活かし、信頼関係作りを大切にしたいです。40代・男性)

 ・映画のシーンを引用されての講義でとてもわかりやすかったです。教育現場での保護者対応に日々悩んでいるので参加させていただきました。こちら側の心がけ、言葉がけ次第で、保護者の受け取り方が変わることを忘れず、少しずつ保護者の気持ちに寄り添いたいと思います。(50代・女性)

 ・ハードな内容の話しなのかと思えば、ソフトな内容で楽しい授業でした。実生活では、つい否定的な言葉が多く出ます。体験させて頂き、意外と気持ちが楽に話せることを実感しました。言葉を選ぶので頭を使いますが、映画を取り上げて頂きわかりやすく楽しく勉強できました。パート2をお願いします。(60代・女性)

 ・ワークショップを含め実践的な内容で納得する部分が多い学びになりました。未解決な部分もみつめつつ話を続けるところがとても素敵であったと思います。(男性)

 

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