ホームメッセージ「教養の森」を旅する人に ―― cicerone 2014 天野雅郎

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「教養の森」を旅する人に ―― cicerone 2014 天野雅郎

【教養の森 cicerone 2014 より転載】

和歌山大学には、その名を「教養の森」と呼ばれるセンターがある。このセンターは、もともと「和歌山大学教養教育研究センター」という、実に、ありきたりの名を付けられるはずのものであったが、以下に述べるような経緯(いきさつ)から、その名を「教養の森」と改めて、今に至っている。――とは言っても、このセンターが正式に活動を開始したのは、平成24年(2012年)10月1日のことであるから、この小冊子(ブックレット)が君の手に届く時点では、まだ生まれてから1年半しか経っていない、一人の人間の生涯に譬(たと)えるならば、まだ生まれて間もない、したがって、これから一人の人間になるためには、さまざまな経験を積み、さまざまな知識や技能を身に付ける必要のある、その意味において、君と同様の、若いセンターであることを、まず知っておいて欲しい。

ちなみに、和歌山大学が現在、大学を挙げて掲げているスローガン(slogan=標語)の最たるものに、和歌山大学は「生涯、あなたの人生を応援します」という文言があることを、すでに君は入学式の式場で、学長の式辞を通じて、しっかり受け止めてくれているに違いない。言い換えれば、それは君の、かけがえのない......君以外の、誰の人生とも、掛け替えることの出来ない、君の人生をこそ応援します、という宣言文に他ならない。そして、そのような君の人生や、その生涯を応援するために、和歌山大学が君に提供している教育(education=君が君の、力を引き出すこと!)は、大きく教養教育と専門教育に分かれており、それぞれ「人間になるための教育」(the art of being a human)と「専門家になるための教育」(the art of being a professional)として、位置づけられている。

と言うことは、そもそも和歌山大学の教養教育が、どのような特徴を兼ね備えているのかを、君に知って貰うためには、この「人間になるための教育」という言い回しを解き明かすのが、手っ取り早い。それに加えて、このような教育の営まれる場として、和歌山大学が「和歌山」という、かつて「木の国」(『古事記』)と呼ばれた地域にロケーションを有し、現在も周囲を、豊かな木や林(=木+木)や、森(=木+木+木)によって取り巻かれているのを、知って貰うことが。さらに、その「和歌山」という「山」の連なりは、はるかに吉野や熊野や、かつての神話や伝説の舞台に通じていると共に、そこから今でも、数々の恩恵に私たちが浴していることを振り返れば、おそらく君も「教養の森」センターという、この命名に納得し、それ相応の愛着をも、感じてくれるのではあるまいか?

この小冊子には、そのような和歌山大学の、教養教育の理念や目的を始めとして、今、本学の門を潜ったばかりの君に、とりあえず知っておいて貰いたい、必要最小限のことが書き込まれている。したがって、これから君が大学生活を送り、正真正銘の大学生になるためには、どうしても必要な、いろいろの情報が書き込まれているから、ぜひとも丹念に、この小冊子のページを開き、そこに発信されている情報を、君自身の手で探し出し、君自身の頭を使い、じっくり読み取って欲しい。――例えば、そもそも大学とは何か? 大学に入学してから、卒業するに至るまで、いったい人(要するに、君)は何を学び、何を身に付けるべきなのか? そのためには、どのような授業科目が教養科目として提供されているのか? それらの科目を、どのように君は選択するべきであるのか? といった情報が。

なお、君が和歌山大学のホーム・ページを開くと、そこにも「教養の森」の名を冠せられ、この小冊子の母体ともなっている、教養教育のスペシャル・サイトが設けられているから、それぞれの授業科目の内容や、細かな留意事項については、そこから情報を仕入れて貰いたい。また、その際に君に、くれぐれも言っておきたいのは、どうか君が自分自身で考えて、自分自身の判断で、君の選ぶべき教養科目を決めて欲しい、という点である。なるほど、そのこと自体は相当に煩雑な作業であり、面倒な行為であることは分かり切っている。でも、それを放棄して、君が誰か(例えば、先輩や友人)の言う通りに、他人任せの選択をしてしまったら、きっと君は大学生としての、そもそもスタート・ラインで躓(つまず)いたことになるに違いない、という点も、どうか忘れないでいて貰いたい。

その際に、もし君に、よく分からないことや、誰かに相談しなくてはならない事態が生じたとすれば、その折には遠慮なく、和歌山大学附属図書館の最上階(夏までは3階、秋からは4階!)にある「教養の森」センターを訪ねて欲しい。そこからは、広く和歌山大学の全体が見渡せる、絶好のロケーションを楽しむことが出来るし、あの『異邦人』の小説家(アルベール・カミュ)も言っていた、あらゆる人間の幸福の原点であり、それどころか、おそらく最も重要で、不可欠なものと評して構わない、夕暮れ、瞑想......そして、その瞑想のための憩いの場(テラス)も、やがて君を迎えてくれるはずである。何しろ、そのような場においてこそ、人間は自分の人生や生涯や、日々の暮らしの、あれこれを思い、その思いを、誰かと共に分かち合いたい、という願いを抱くに至るのであるから。

その意味において、このセンターの英語名は、和歌山大学以外の全国の大学において、ごく一般的に使われている、例えばGeneral Education(一般教育)やLiberal Arts Education(リベラル・アーツ教育)という語を用いていないことも、君に知っておいて貰いたい点である。言い換えれば、和歌山大学の「教養の森」センターが、その英語名に強いてHuman Enrichmentという語を宛がっているのは、このセンターが何よりも、人間的な豊かさを追い求め、それを探し出す場(と言うよりも、人間関係)として、みずからを認識し、自覚しているからに他ならないし、そのような豊かな人間性を獲得するための、手段や方法や技術(アート)のことを、和歌山大学が「人間になるための教育」と呼んで、これを教養教育の同義語に使用している点についても、すでに君は了解済みであろう。

ところで、君は古く、センター(center)という語を遡ると、それがギリシア語の「刺す」という意味の動詞(kentein)に由来しており、例えば君が、製図用具のコンパスを使って、ぐるりと丸い円を描く時のように、そのコンパスの針を刺した場所が中心(すなわち、センター)になり、そこから丸く、周囲に均等な距離で円が描かれる姿を表現する語であったことを、知っていたであろうか? 知っていたのであれば、それが「教養の森」センターにも、同様に妥当するイメージであることを、さらに君の知識として、上乗せをして欲しいし、願わくは、そこから君自身がコンパスになって、より大きな「教養の森」の円を描くことに、加わって貰えると有り難い。と言うのも、突き詰めるならば、この一年半ばかりの「教養の森」センターの活動目的は、それ以外には、なかったからである。

教養の森に関するお問い合わせはこちらまで 和歌山大学学生センター 学務課

| 所在地:〒640-8510 和歌山県和歌山市栄谷930 | 電話番号:073-457-7130 |

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