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「教養の森」を旅する人に――2013 天野雅郎

【授業計画 Syllabus 2013 より転載】

今、この授業計画(シラバス)を手に取り、そのページを開き始めた君に伝えたい。君は、もう高校生ではないし、すでに受験生ではない、という当然の事実を。ただし、それは同時に君が大学生であることを意味してはいないし、保証してもいない、という意外な事実と合わせて。何故なら、君は確かに和歌山大学の入学試験を受け、合格し(「おめでとう!」)、こうして和歌山大学のキャンパスに立ち、目の前に広がる紀淡海峡から吹き寄せる、春の風を頬に受けてはいても、君の顔が本当に大学生の顔付きを手に入れるためには、まだ多くのものが君には欠けており、不足しているに違いないからである。

その意味において、この授業計画(シラバス)と君との出会いが、幸運な出会いでありますように。――と言うのも、君は大学の授業科目が大きく、専門科目と教養科目とに区分されていることを、知っているであろうか?知っているのであれば、すでに君は大学生としての第一歩を踏み出していることになるが、そもそも専門科目とは君が所属している、それぞれの学部や学科や、課程やプログラム等で、まさしく専門的に学ぶ授業科目のことであり、これを英語に直すとspecial subjectとなるから、それは君を、文字通りの専門家(スペシャリスト)にしてくれる授業科目に他ならない。

したがって、君が和歌山大学の四つの学部の、どの学部の門を潜ったのか、また、どの学科、どの課程、どのプログラム等を今後、君が選び取ることになるのかで、君が専門科目として受講しなくてはならない授業科目は、それぞれ異なっており、教育学部には教育学部の、経済学部には経済学部の、システム工学部にはシステム工学部の、観光学部には観光学部の、その意味においては特殊(スペシャル)な、個別の専門科目が準備されている。そして、そのような専門科目を履修した上で、必要とされる単位数を取得した後、君は卒業生(graduate)となり、専門家としての道を歩き出すことになる。

それに対して、教養科目は英語に直すとliberal artsとなり、君が所属する学部には関わりなく、はなはだ自由(リベラル)に、選択したり、選択しなかったりすることのできる、学部には左右されない、授業科目のことである。言い換えれば、教養科目は専門科目とは違い、何かの授業単位を君が取得しなかったことで、進級することを認められなかったり、卒業することが叶わなかったりする、そのような科目(いわゆる、必修科目)ではなく、端的に言えば、君が一人の専門家になることを離れて、君が一人の人間であり、人間らしくあるための、きわめて人間的(ヒューマン)な授業科目である。

実際、そのような教養科目のことを、和歌山大学は「人間になるための教育(the art of being a human)」として位置づけ、これを専門教育と並んで、大学教育の柱の一つに数えている。――例えば、君が大学を卒業した後、運好く希望通りの職種が見つかり、就職をすることが叶ったとしよう。そして、それから君は職業人(プロフェッショナル)として、いわゆる定年に至るまで、その仕事に邁進し続けることが出来たとしよう。しかし、それは君の毎日の生活の、ひいては君の人生の、いったい何分の一の時間とエネルギーを費やして、それと引き換えにして、成り立つべきものであろうか?

多分、君は人間の幸福が、そのような足し算や引き算や、場合によっては掛け算や割り算によっては、決して答えの見つからないものであることを、とっくの昔に感づいているはずであるし、そこから人間の幸福が、いつも暮れることだけを繰り返す、とても切ない暮らしの中で、例えば服を着たり、ご飯を食べたり、眠ったりする、ありきたりの営みにおいて育まれ、また、そこには必ず、君が君ではない誰か......それにも拘らず、その誰かのことを君は、君と同じくらいに気に掛かり、君以上に考えてしまう、そのような誰かと一緒にいることで満たされることも、よく分かっているはずである。

和歌山大学は、そのような君の幸福と、君の生活と人生のパートナーになることを約束し(「和歌山大学は、生涯、あなたの人生を応援します。」)、目下、そのための取り組みとして、教養教育に関する様々な刷新を行なっている。これから君が、この授業計画(シラバス)のページを捲ると、そこには「教養の森」科目群を始めとする、本学の教養科目の構成と、その紹介の文章が収められているのを、君は目にすることになるし、さらに「教養の森」ゼミナールや「21世紀」問題群や「わかやま」学と呼ばれる、まだ生まれて間もない、新鮮な授業科目が顔を並べているのにも、君は気が付くはずである。

また、これから君がキャンパスを歩き廻り、図書館へと足を運べば、そこには「教養の森」センターという名の、いささか風変わりな部屋があり、おそらく君が、よもや大学で目にするとは思ってもいなかった、ファッション雑誌や映画のDVDや、写真集や画集の数々が、君の来るのを待っているに違いない。高校生の頃、きっと君は大学を、楽しい場所としてイメージしていたのではなかろうか? ――正解である。大学は楽しい場所である。が、その楽しさの最たるものは、実は大学の勉強を通じてこそ、得られるものである。そのことを、今、春の風を頬に受けている、君の若い、目と耳に伝えよう。

教養の森に関するお問い合わせはこちらまで 和歌山大学学生センター 学務課

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