溝口 博一様 「有機農業と地域活性化」 ― そしてサテライトのススメ ―

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溝口 博一様 「有機農業と地域活性化」 ― そしてサテライトのススメ ―

有機農業と地域活性化

― そしてサテライトのススメ ―

 

和歌山大学南紀熊野サテライト

同窓会会長 溝口 博一

 

 大学院経済学研究科を修了して3年余りとなります。最近では、仕事を終えた後にBig・Uのサテライトに時々お邪魔して、先生方や事務局の皆様とニュースを交換することを楽しんでおります。このような日常の中で、和歌山大学と南紀熊野を結びつけるために私にとって身近な有機農業のあれこれを面白く話してみましょう。

 「有機農業って何?」とよく聞かれます。これは、国連の下部組織であるコーデックス委員会によって規定された農法で、化学肥料や化学農薬あるいは遺伝子組換え技術を使用しないで営農することです。1番大きな効果は環境の負荷が少ないことです。また、作物がおいしいこと安全であることも特徴です。欠点は、労力がやや多く必要であること、単位面積当たり収量が通常の栽培方法と比較すれば劣ります。

 「そんな農業をして地域は活性化するの?」とも質問されますが、長くなりますから南紀熊野の土地柄と観光における「食」の面からお話しましょう。私たちが住むこの土地は山国です。この土地で100ヘクタール規模の農業経営をしようとすれば(つまり、農産物価格で輸入品と対抗する場合)、機械化はむずかしく超のつく低賃金労働力を必要とします。この条件は無理な相談であると共に不可能です。多くの農家が大手小売業の安値競争や低価格輸入品を前に青息吐息、元気をなくしています。これが地域社会の活力を削いでいる大きな要因です。地域社会の活力は、自由時間(ヒマともいう)と小遣い銭を持った人が何人いるかで決まります。サラリーマンの数の多寡ではありません。

 そこで、この状況を打破するには2つの方法があると思うのです。ひとつは小規模の家族農業を営み、産物をファマーズマーケットに出荷する方法です。これは流通経費を大幅に削減し、製造=小売の業態を実現することで農家手取りを確保し、消費者に新鮮で安価な農産物を提供するものです。この形態が全国を視野に入れたものに成長すれば、都会のスーパーに産直の農産物は普通になるでしょう。この状況になれば、卸売市場や問屋機能が縮小しダイレクトに消費者の声が農家に届くことでしょう。

 もうひとつの方法が有機農産物を作って活用することです。むずかしい理屈は言わなくても「おいしい」のです。食べてさえもらえれば、それは解ります。シェフが「食材に勝る料理はない」という場合の食材とはこのことだと思っています。そこで私は、「人には添ってみろ、馬には乗ってみろ」という格言よろしく多くの人に作物をサービスしているのです。南紀熊野は山国の故に量は少ないが質の良い農産物は数多くあります。有機農業は平野部よりも山間部に適しており、私達の経験では見映えもかなり良いものが作れます。これを観光の食から考えてみましょう。着地型観光における食は宴会料理ではありません。少なくとも60~70%は地元の常連客が占める朝・昼・晩のいわゆるレストランが重要です。地元民にとってはありふれた食材をシェフが料理する店で、この代表例が田園に位置するオーガニックレストランです。「食べてもらって有機を広める」そんな時を迎えているように思えます。

 私が所属する有機農業グループは15名で17ヘクタールの農地を耕作しています。7年目を迎えますがメンバーの変更はありません。「おもしろくやろう」がモットーの活動は愉快です。詳細は略しますが、農業は仕事として十分に成立します。また、時間を自由にコントロールできますから地域活動にも積極的です。私のサテライト経験から言えば、現実に進行しつつある仕事は大学の講義のように理路整然とは参りません。しかし、南紀熊野サテライトは考えるヒントの多くを提供してくれました。現実と学問の間を往来することによってファイトを得たとも言えます。このことが周囲の人達にサテライトの受講を勧める私の動機になっています。