溝口 博一様 「後援活動の報告」

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溝口 博一様 「後援活動の報告」

後援活動の報告

 

 和歌山大学南紀熊野サテライト同窓会長  溝口 博一

 

 紀州地域学共同研究会(代表 和歌山大学 大橋直義先生)が、中世の歌に関するシンポジウム・講演会を企画しているとお聞きし、数名の会員と相談の上、「ぜひBig・Uで」とお願いしました。各地からお越しになる先生方のことを考えれば、本校で開催する計画が便利だとは思いつつ、一方で南紀熊野の魅力を伝えるうえで和歌の要素は大きいわけですから、同窓会も協力する故にぜひと要望したわけです。大橋先生が当方の願いを了とされ開催の運びとなりましたこと、先生に感謝申し上げます。

 さて、和歌というと一般には「浮世離れしたもの」と受け取られがちですが、そんなことはありません。古今集の仮名序に言うところの、和歌は「力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ、男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むる」ものだからです。

ところで、交通手段が格段に発達した今日、便利さを得ると同時に失ってきたものが、歩くということの重さではないかと思うのです。熊野古道を歩き本宮に参詣すると「甦る」と言われるのですが、これは千年の道普請に支えられたデコボコ道を歩くことによって五感を研ぎ澄まし、そこで育てた第六感でもって熊野の神を拝する時に生まれるものであると私は思っています。汗を流して熊野に参詣した実体験による充足感を得て、自然の中で人は生かされていると実感するのです。南紀熊野にとって中世の歌は当時の貴族社会のものであるとは云え、道々の情景や生活を詠み、歌枕の地の価値を大いに高めてくれます。例えば熊野懐紙の和歌は、歌会が催された王子社を特定できるものも多く、この地の宝物です。和歌は地域の力のひとつであり、これを生かすことは地域の豊饒さを示すことになりましょう。

 私は先輩方からこの同窓会を引き継いで以来、南紀熊野における和歌山大学の知の拠点を地域に生かしていく方法を考え続けています。そのひとつが、今回のように地域に関連するシンポジウムや講演会を「後援」することではないかと思います。今後の可能性としては、熊野古道沿いの和歌の名所・歌枕を紹介する旅人向けのガイドブックを作成し販売する活動などが考えられます。このタイプの観光資源の発掘はあまりできておらず、面白い企画になると思うのですが如何でしょうか。

 今般のシンポジウム・講演会「紀州地域の<うた>と聖地」は、同窓会の多くの会員、語り部の会の多数のご参加をいただきました。同窓会員の瀧川泰彦様よりお手製の「小栗判官・照手姫」のお人形の展示をいただき、語り部の会連絡協議会長 宇井正様には、先生方の熊野巡検に一日中同行していただきました。また、経済学部OBの北新町 那須功様からはご厚志を頂戴いたしました。記して深謝申し上げます。