小柴賞は、ノーベル賞を受賞した小柴博士が設立した財団法人「平成基礎科学財団」が昨年から始めた。同財団は、基礎科学の面白さが分かる教育の普及と、意欲、夢を持った若者の育成を掲げており、賞はその一環。生徒の創意や主体を引き出し、科学的な能力、態度を育成する小中高校の理科教育の取り組みを募り、秋山仁・東海大学教育開発研究所次長ら5人の選考委員が選んだ。 豊増さんは「応募を決めたのは昨年(2004年)10月の締め切り日。応募要項のフォーマットをみた時、『書ける』と思い一気に書きました」。タイトルは「光と風と僕たちがはこぶ、田舎のブロードバンド」とし、豊増さんが非常勤講師を勤める大成高校美里分校で、2003年に3年生19人を対象に行った選択授業「シミュレーションサイエンス」の内容を記した。 光ファイバーが来ている岩出町と、美里町の山頂、分校にアンテナを立て、無線で通信を可能にした取り組みで、最後には小学校と高校のテレビ会議まで可能にした。 特に苦労したのが、アンテナの設置場所選びで、生徒たちと山の中を歩き回りポイントを探索、地域やボランティアを巻き込んだ取り組みとなっていった。豊増さんは「生徒たち全員がどこかの段階で必ずやる気を出し、何かに力を発揮してくれた。卒業した今でも天文台に来てくれる」と喜ぶ。 最終選考に残ったとの報告を受けたのは1月下旬。最後は4人に絞られ、3月27日に東京で、小柴博士と選考委員の前でプレゼンテーションを行った。「生徒たちの賑やかな活気があり、全力でやったので自信はあった。ノーベル賞受賞者の前で偉そうなことを言いました」と豊増さん。 個性的な取り組みが並んだが、最終的に「無線のエレクトロニクスを理解したものもいれば、力仕事を請け負っただけの生徒もいたが、このやり方が生徒を生き生きさせた。理科教育的な成果にとどまらず、僻地教育、個性を尊重した教育のあり方まで有意義な示唆を与え、ユニークで独創性が高い実践」との評価を得て見事、受賞。 「本当にうれしかった。小柴博士からは『苦労もあるでしょう』と声をかけてもらい、今、その時を思い出しても目頭が熱くなる」と声を詰まらせる。 賞金の100万円から、昨春卒業した教え子に「ノーベルさんのおすそわけ」と手書きした封筒に1万円ずつ入れて手渡している。「人類に貢献した人に贈られるのがノーベル賞。そこからおすそわけを得る意味を教え子に考えてもらいたい」 豊増さんはみさと天文台に着任し今年で10年。合併や財政上の問題で、全国の天文台は厳しい状況にある。「自分自身は天文台で星のことをみんなに話すのが本当に楽しいが、課題は多い」。日本は先進国だが、科学がまだ特別なことと思われている面があるのが実情。スウェーデンなどでは一般の人もごく普通に科学のことを語り、関心を持っている。「もうちょっと普通に科学を楽しめる、本当の意味でのポピュラーサイエンスを広げたいですね」と希望を膨らませている。
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