和歌山大学システム工学部橋本研究室
LAST UPDATE 2010.08.17

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0. タングステートTOP 1. W3ユニットによる
ペルオキソへテロポリタングステート
2. W3以外のユニットによる
ペルオキソへテロポリタングステート
3. ペルオキソイソポリタングステート
配位子付ペルオキソポリタングステート
4. ペルオキソ基を持たない
タングステート

[ペルオキソポリタングステートの特徴]



☆ 全体的な特徴
 ペルオキソタングステート系では、一般に
 ・特に濃度が高い場合に錯形成反応が遅い
 ・ペルオキソ基(過酸化水素)の分解が酸性領域でも早い
 ・ペルオキソ基分解の影響も相俟って、pHの時間変化が大きい(出来るものが変わっていく)
 という特徴(というよりは問題点)があります。

 モリブデン系に比べ、イソポリタングステートはあまり知られていません。単核、二核のものは 何種類か知られていますが、そのほかには四核(二種)、七核のものしか報告がありません。 このページにある六核、十三核のものは、問題点が解決していないため、まだ論文化出来ていません。

 単核、二核のものはタングステンに対して過酸化水素(ペルオキソ基)が大過剰に存在するとき 形成しやすいという特徴があります。一方、タングステン数の多いアニオンは、 構造中でWに対するペルオキソ基の数が少なく、反応溶液中で過酸化水素(ペルオキソ基) がWと同等かそれ以下の濃度である場合に形成します。

 二核のものは一次元はしご状ポリマーを形成します。カリウム塩として乱れ構造の無い結晶が得られ、 精度のよい構造決定が出来ました。


危険、爆発性!!  


 有機配位子をもつものでは、単核や二核など、比較的小さいものがほとんどです。 このページにある四核、六核のものは、 大きめなユニットということが出来ます。





 ペルオキソへテロポリタングステートでは、ヘテロ原子団が四面体のもののみが知られています。 これには、四面体の頂点のうちいくつかが有機官能基で置換されているものも含みます。
イソポリタングステートと同様に、過酸化水素(ペルオキソ基)がタングステンに対して 過剰に存在するか(Wの2倍以上)否か(2倍以下)で傾向が変わります。

 四面体型へテロ原子団を有し、過酸化水素(ペルオキソ基)が過剰に存在する場合には、 いわゆる(Ishii-)Venturello型アニオンまたは、そこからタングステンがいくつか取れた 「欠損型」(Ishii-)Venturello型アニオンが生成します。

 このアニオンは、過酸化水素を酸化剤とする酸化反応における酸素キャリヤとして 高い活性を有することから、様々なヘテロ原子を持つアニオンが合成され、 その酸化反応活性が調べられました。

 この(Ishii-)Venturello型アニオンと近い関係にあり、やはり過酸化水素(ペルオキソ基)過剰 の状態で形成すると考えられる新しいアニオンも 見つかりました。ただ、こちらはこれから詳細な研究が必要です。

 過酸化水素(ペルオキソ基)が少ない場合には、様々な多量化反応が起こり、たとえば こちらこちらにも示すように 様々な構造のアニオンが得られます。本研究室では、NMRによる追跡が容易であることもあり、 リン(V)をヘテロ原子としているものが多いですが、イオウ(VI)やホウ素(III)を含むものも 見つけました。ヒ素(V)は毒性の問題から扱っていません。



☆ 共通な構造ユニット
 過酸化水素がタングステンに対して過剰にある場合には、単核または二核のペルオキソタングステート が優勢であり、これらが構造単位として含まれてきます。

 過酸化水素がタングステンに対して過剰でない場合(タングステンに対して2倍以下)である場合には、 多様な構造が得られるのですが、それらのほとんどは、われわれが「W3ユニット」と呼んでいる 部分構造を持っています。


 このユニットは[W3O14-x(O2)x]と表すことが出来、 xの数は場合により異なりますが、基本的にきれいなL字型よりも鋭角的な構造を持っています。 Keggin型構造や(Wells-)Dawson型構造に見られるW3ユニット(正三角形型)とは異なるものです。 ペルオキソ基が導入されることにより、タングステンの配位多面体は五方両錐型(十面体)となります。 そのためにユニットの赤道面上での多面体一つあたりの広がりが大きくなり(四角形→五角形)、 全体の構造として鋭角的になります。このことが四面体型へテロ原子団のユニット上への三座配位 や開口部への二座配位を可能にし、通常のポリアニオンとは異なる構造的特徴を示しています。
 ただし、このユニット単独での溶液内での存在は確認されていません。これは、そのままであれば -16価という非常に大きな負電荷によると思われます。この負電荷のためにこのユニット単独では 非常に加水分解を受けやすく、安定に存在するためにはプロトンやカチオン、ヘテロ原子団や 配位子による正電荷を多く引き付ける必要があると想定されます。このユニットが溶液中で 存在することをなるべく直接的に検出することが大きな課題の一つです。
 このユニット持つ最も簡単なアニオンは、L字開口部に二座、ユニット上に三座で四面体型 ヘテロ原子団が配位した、リン酸 や硫酸錯体として得られています。
 また、このユニットを拡張したといえる四核、六核のユニットも見つかっています。


 ペルオキソ基の配位する位置は上のW3ユニットの図と多少異なっていますが、 大きく見てW3ユニットを1つまたは3つ拡張したユニットとみなすことが出来ます。 また、六核ユニットはW3ユニットが平面的に2つ連結したと見ることも出来ます。 四核ユニットはイソポリタングステートや炭酸錯体、ホウ酸錯体酢酸錯体で得られており、 幅広いpH範囲に対応するかなり普遍的なユニットということが出来ます。また、六核ユニットは 現在のところ酢酸、プロピオン酸錯体で 知られています。
 さらに、六核ユニットはここに示した平面型の他に、ねじれ型のものも見られており、 メチルリン酸錯体、リン酸錯体硫酸錯体プロピオン酸錯体で得られています。 イソポリタングステートで得られたヘキサタングステート も合わせると、四種類の六核ユニットが見つかっていることになります。W3ユニットを元に考えてみると、 次の図のようになります。

 組成やペルオキソ量は、図に示したとおりです。これらのうち、単独で取り出されているのは右列の二つです。 W3ユニット自身と同様に、左列の二つも負電荷が大きすぎ、加水分解反応に対して不安定となることが予想されます。 このため、安定化には正電荷を引き付けることが必要であることが想定され、配位子やヘテロ原子団などが必要と なっていると考えています。もしもプロトンやアルカリ金属イオンなどが付加したものが単離できれば、この点について 明らかに出来ると考えています。

 なお、配位子やヘテロ原子団については、タングステンに配位する酸素原子はユニット側に 属するものとここでは考えております。したがって、たとえばリン酸基PO43-が 三座で配位する場合にはPO3+が、酢酸イオンが配位する場合には CH3C3+が配位するものとして捉え、上記の説明を行なっています。




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