★ 人工知能とは?

従来の計算機としてのコンピュータは、数値計算やデータ処理など 人間が行うと多大な労力と時間を伴う仕事(主にルーチンワーク)を 肩代わりする道具として利用されてきました。 近年のコンピュータはその計算能力も飛躍的に向上し、最新のスーパーコンピュータ を使うと1秒間に数千億回もの科学数値計算が可能です。 こうしたコンピュータの性能の向上に伴い、これまで人手で解けなかった数学の問題 などもコンピュータを使って解くことができるようになりました。 また、近年のインターネットの普及により、コンピュータは計算だけではなく、 コミュニケーションにおいても欠かせない道具となり、 今日のコンピュータは人間の社会活動のあらゆる側面を支えています。 さて、このように高性能化、高機能化されていくコンピュータですが、今後の 技術の発展によって、コンピュータはどこまで人間に近づくことができるの でしょうか?

古くは中世の自動機械から、現代のSFにおける人造人間やロボットに至るまで、 知能を持った機械の実現は、古来からの人間の夢でした。 今日のコンピュータはさまざまな人間の知的活動を代行できるようになりましたが、 その多くが人間が与えたプログラムに従って動いているものです。 今後コンピュータが我々の日常生活により身近なものとして浸透していくためには、 プログラミングやコンピュータの専門知識を持たない一般の人が容易に扱え、 またコンピュータ自身が能動的に人間の思考や発想を支援するような 技術が必要となります。このように知能を持ったコンピュータの実現に向けて、 人間の知能のメカニズムを解明し、コンピュータ上で実現する方法を研究する分野を 人工知能(Artificial Intelligence: AI)といいます。

★ 研究テーマについて

人工知能の研究の始まりは 1950 年代まで遡ります。約半世紀の研究を経て、 現在その可能性と限界が次第に明らかにされつつありますが、未解決の問題も 数多く残されています。その中から、以下では私の研究テーマを簡単に紹介します。

 非単調/常識推論

我々が日常行う「AならばB。BならばC。よって、AならばC《 といった推論は演繹(えんえき)推論 と呼ばれるものです。 演繹推論は推論結果を単調に積み重ねていくことが出来、 コンピュータが扱える最も容易な推論の一つです。しかし、 我々の日常生活においてはこうした単調な推論で対処できる状況ばかりとは限らず、 一般に非単調な推論が要求される複雑な問題が 数多く存在します。 このような非演繹的な推論一般を常識推論と 呼びます。こうした常識推論をコンピュータ上で実現するためには、 我々人間が日常行なう常識推論を抽象化し、機械化する作業が必要となります。 本研究では実世界において人間が行うさまざまな常識推論を数学的に形式化し、 コンピュータ上で実現するための方法論を研究します。 本研究における常識推論の形式化という作業を通して 人間の推論メカニズムが明らかにされ、 計算量を解析することによってコンピュータで実現可能な 機械推論の限界が明らかにされることが期待されます。

 知識表現

コンピュータが人間のように推論を行うためには、 人間が持っている知識をコード化してコンピュータに蓄えておく必要があります。 知識表現とはこうした知識をコンピュータ上で どのような形式で表現するかという問題です。 このようにコード化された人間の知識は 知識ベースと呼ばれるプログラムとなり、 このプログラムの計算によって機械的な推論が実現されるわけです。 本研究では、こうした知識を記述するための言語として 論理と呼ばれる数学的手法を用いることにより、 汎用性の高い知識表現の基礎技術を構築することを目的としています。

 知識更新

現代の情報化社会では、情報はめまぐるしく変化します。 こうした状況においては、我々は一旦取り込んだ古い情報を 新しいものに随時更新していかなくてはなりません。これはコンピュータにおける 知識ベースにおいても同様です。しかし、知識ベースの更新問題はそう単純では ありません。単に古い情報を新しい情報で置き換えるだけでは、 新旧の情報が一体となることによって 矛盾が生じることもあります。 また、ある情報を更新したい場合に関連する情報の更新の問題、また更新による 波及効果をより少なくするための極小変化の問題 など多くの課題があります。 本研究では、こうした知識更新のための諸問題を検討し、 更新を機械的に実現するための枠組の構築を行います。

 機械学習

人間は経験や学習を通じて自らの知識を増やし、成長・進化していくことが 出来ます。一方、現在のコンピュータは受動的で、人間がプログラム作成して、 入力してやらないと動作しません。将来、コンピュータが人間のように能動的に 学習・進化する機能を持ち、未知の入力情報に対して自ら適応する能力が備われば、 人間の労力は軽減し、コンピュータの利用価値はさらに高まるでしょう。 このように、コンピュータが入力プログラムやデータから新たなプログラムを 自動的に構成し、新しい情報環境に適応する知識を機械的に獲得するための 技術を機械学習といいます。 機械学習を実現するための推論としては、 帰紊推論発想推論などが代表的で、 本研究ではこれらの推論を使った知識の発見や学習のメカニズムを探求します。

マルチエージェントシステム

人工知能において問題解決を行う知的主体のことを エージェントと呼ぶことがあります。 マルチエージェントシステムとは、 単体のエージェントでは解決出来ない複雑な問題を、 複数のエージェントが協調して解決を図るシステムのことです。 従来の人工知能における知識の表現や推論の研究が、 主に「単体のエージェント=人間《を模倣するシステムの開発に 主眼が置かれてきたのに対して、 マルチエージェントシステムは、「複数のエージェント=社会《を模倣するシステムの 開発を目的としています。 そこでは、エージェント間のコミュニケーション、相互作用、協調と競争、 駆け引きの戦略など、単体のエージェントでは起こらない様々な問題が具現します。 本研究では、マルチエージェントシステムにおけるエージェント間の相互作用や 協調問題解決のための枠組について検討を行います。

★ 人工知能関連サイト


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