マスターコースの研究心得
コミュニケーション科学クラスタの大ゼミや修士論文(発表会を含む)の
指導経験をもとに,「この1〜2年のうちに修士論文を書こうとする学生の
ためのアドバイス」をまとめてみます.
コミュニケーション科学クラスタには,以下の特徴があります.
- 教員は,情報分野と環境分野にまたがっている.
- 各学生の研究指導は研究室単位で行うが,修士論文の合否などは
教員の合議によって決定している.
(主査・副査は書類上割り当てられますが,
形式的なものです.言い換えると,「主査(指導教官)がOKならいいでしょ」
という考え方は通用しないということです.)
しかし,他のクラスタや他の大学院でも適用できるよう,
なるべく普遍的な書き方をとるようにしています.
心得1: 限られた期間で学術的な成果を発表せよ.
- 「研究」には限りがないが,マスターコースの研究には期限がある.
- したがって,どこまでをすべきかを常に考えながら研究にとりかかる必要があります.
- 軌道修正が必要なこともあるでしょう.ある方針で進めて予定の成果まで到達できないということも,共同研究先からデータや機材が届くのが遅れるといった問題も起こり得ます.
- ソフトウェア,統計データを研究成果として保存することを忘れないようにしましょう.それらの使い方や読み方を記したドキュメントも.
- 研究日誌を書く習慣をつけましょう.研究というのは,劇的に成果の挙がる日もあれば,なかなか思うように進まない日もあります.日誌は長期的な成果を知ることのできるメディアになり,また将来,(ちょっと不安になった)自分を励ますことができます.
- 研究とは別の「行事」をおろそかにしない,しかしそれに忙殺されない.
- 通常,M1のうちに講義の単位を取っておきます.3年生のときと同じくらい,授業(レポートや試験もあることでしょうし)に時間を取られます.内容も高度になります.
- 2年間に渡って「大ゼミ」があります.週1回,講義室に集まって人の話を聞き,年2回は自分も発表します.「座長」も持ち回りです.M2の2回目の発表は,修士論文中間報告になります.
- M1終わりごろからM2始めごろまでは,就職活動に費やすかもしれません.
- 就職活動(が終わる日)などいくつかの例外を除いて,行事には「実施日」が決まっています.その日・その時間に全力を尽くせるよう,準備をしておきましょう.
- スケジュール帳をつけるのも効果的です.研究日誌とは別にします.日誌は過去を見るための,スケジュール帳は未来を見るための道具です.
- 研究室活動も積極的に.
- 研究室活動には,研究打ち合わせ,輪講,後輩の指導,先生から言われた雑用などがあります.
- 「自分の研究だけすればいいと考えるくらい,自分の研究や研究の進め方が優れている」ということは,マスターコースではあり得ません.
- 輪講発表や雑用などで,期日のあるものはきちんと実施しましょう.
- 学外との共同研究では,大学院生が「実質的なリーダー」とみなされ,専門性を期待されることがあります.専門技術の勉強や予習を怠らないようにしましょう.礼儀はあまり要求されませんが,相手の立場に配慮して行動する「気配り能力」を磨くのにはいい機会です.
- 自分の研究テーマに後輩がつくのは幸せなことです.自分は修士論文,後輩は(例えば)卒業論文の完成を目指して,それぞれ目的を持って協働しましょう.
- 学術的な成果のまとめ方は,学会の論文・予行集や先輩の修士論文を参考に.
- 修士論文の書き方(体裁)は,先輩のものを参考にして,内容については指導教員から何度か添削を受けるようにしましょう.
- 常日ごろから学会の論文を読むようにしましょう.自分の関連する分野は,日本語については全文,英語についてはabstract(概要)を読めることを目指しましょう.
- 読んだ文献の情報をメモしておきましょう.返却(あるいは焼却)してから「あの文献,どこだ?」と言わないように.そういった文献の情報(書誌情報ともいいます)は,論文執筆時の参考文献になります.
- 修士論文の参考文献も,「どれだけ調査をしたか?」に関連して修士論文発表会でよく質問されます.その分野の文献をたくさん調べて参考文献につけると,先生方には「きちんとサーベイしているね」と思ってもらえます.それが難しい研究テーマの場合でも,自分が研究を進める上でキーとなる文献を見つけておきましょう.
(以下未完...)
心得2: 教員とのコミュニケーションを絶やさぬこと.
- 標準的には1年間に1回,学外発表を行い,専門家からアドバイスをもらおう.
- 学外発表の機会は教員が知っている.「学外発表に値する研究内容か」も教員は知っている.
- 無断で長期に渡って研究室に来ないと,教員の信頼を損なう.
心得3: 様々な「聞く人」に耳を傾けよ.
- 学会発表とクラスタゼミ発表は,聞く人が違う.準備も違ってくる.
- 「学会発表したから」「利用者アンケートをとったから」は慢心.
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Last modified: Fri Apr 9 11:42:09 JST 2004