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システム科学概論について考える


以下では,システム科学概論という科目について個人的意見を述べます.

システム科学概論は,システム工学部が学生を受け入れた 初年度(1996年度)から2000年度まで, 前期に開講されていた科目です.1999年度までは, 中川先生おひとりが担当されていました.2000年4月に中西先生が 赴任され,2000年度は中川先生・中西先生のご担当でした.

2001年度は,カリキュラム改正によりこの科目(と, 学部全学科必修の他のマス授業, 「環境科学概論」と「デザイン論」)は廃止されました. ただし,かわりに「情報システム」という科目名の教養科目ができ, 他学部の学生も受講するかもしれませんが,必修科目ではなくなりました.

300人以上を対象とした講義というのは,授業も大変だし(しゃべっている だけでいいかというとそうでもありません.一度授業を聞いたことがあるのですが, 私語がひどくて中川先生がたびたび注意をされていました), 試験と採点への手間も相当なものになります.

必修科目というのも厳しい話で,ある4年生(なんで4年まで取らんかったのかと 非難することなかれ.この学生は編入学なのです)がやってきて, この科目が通らないと卒業できないということで,中西先生は追試験を 設定することになったのでした.「設定」と書いたものの実施されることは ありませんでした.実施予定日の前日の晩に逝去されたためです.

講義する側,受講する側ともに気苦労が多く,そういう意味では この科目の廃止は仕方のないことだと思います.

しかし,講義を聞き,試験問題を見てみると,こういった, 「システム工学あるいはシステム科学というのが どういうものかを,具体例を挙げて解説していく」科目は大切であり, そしてそれを入学まもない1年生に講義するのがふさわしいと感じました. 極論ですが,工学は実際にモノを作ることなしに,科学は論文を読むことなしに, 体得できません. しかし逆に,単にたくさんのモノを作ったり,単にたくさんの論文を読んだり しただけで体得できるかというと必ずしもそうではなく, 各人の持つ記憶や経験と,今作ったモノや読んだ論文を融合させて, ときには火花が散るかのように,ときには段階を踏んで, 「ああ,これが工学/科学ってことか!」と理解できるのではないかと思います. そして,システム科学概論の講義内容は,理解のもとになる「記憶や経験」の 一部になるのではないでしょうか.

「情報システム」は,これまでのシステム科学概論と同じやりかたで, 最新の技術動向を採り入れて授業するということを聞いています. 1年生には,教養科目ですが受講し,毎回出席して目と手と頭を動かすことを 強く勧めます.


中西隆一先生には, ひとつの問題でシステム工学について深く考えるきっかけを いただいたことに深く感謝し,またご冥福をお祈りしたいと思います.


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takehiko@sys.wakayama-u.ac.jp