1背景と目的

近年,世界的にグローバル化が進んでおり,国を越えた人の行き来が活発化しています.日本でも訪日外国人や在日外国人は増加しています.このため,日本においても母語が異なる人々の間での対面コミュニケーションを行う機会が増加していると考えられます.例としては,大学での留学生との討論や,企業での複数母語話者が存在する会議での討論があります.

このような母語が異なる人々の間での討論は共通言語を用いることが多いと言われています.この場において共通言語を母語としない人(非母語話者)は,語彙や言い回しの問題が存在しているため討論の内容を正確に理解することは難しいものとなっています.

そこで本研究では,多言語対面環境でリアルタイムに行われる討論を支援する,非母語話者支援システムPaneLiveの開発を行っています.

2非母語話者支援システムPaneLive

(1) システムの利用者

PaneLiveは,討論を行う「討論者」と,討論の内容をまとめる「編集者」の役割があります.「討論者」は互いに同じ言語(共通言語)で討論を行います.「編集者」はその討論の内容を本システムに入力します.なお,「討論者」は共通言語で日常会話ができ,比較的共通言語を理解できる人を想定しています.

(2) システムの構成

システムの構成は図1のようになっています.「編集者」が入力した文は機械翻訳によって翻訳され,その内容をPaneLiveサーバに送ります.PaneLiveの画面は共有されており,「討論者」は自分の母語で討論の内容を見ながら討論することができます.

PaneLiveのシステム構成
図1. PaneLiveのシステム構成

(3) システムインタフェース

PaneLiveは図2のように討論内容を入力するラベルの色やサイズを変更できます.また,図2左上のボタンで言語の切替が,図2右上のボタンでページの切り替えが可能となっています.

なお,PaneLiveはFlexで作成しており,Webブラウザのみで操作が可能となっています.

PaneLiveの画面
図2. PaneLiveの画面

(4) 複数の会議・討論対応

PaneLiveは複数の会議・討論に対応するために図3のように部屋機能を用意しています.この機能により同時に複数の会議・討論を支援することができます.また,部屋をパスワード保護することもできるため,プライバシーを守ることができます.

部屋機能
図3. 部屋機能

3PaneLiveの特徴

PaneLiveは,「多言語」と「リアルタイム」の二つに対応するために,様々な機能を用意しています.

(1) 多言語対応

折り返し翻訳(図4上部分)
入力された文を一度他言語に翻訳したあと,その後元の入力言語に再翻訳する機能です.この機能を使うことで,翻訳先の言語を理解できなくても入力した文がどのように翻訳されたかを知ることができます.
単語の辞書登録
専門的な単語など,機械翻訳で翻訳が難しい単語を事前に機械翻訳に登録する機能です.この機能を使うことで,単語が正確に翻訳されるようになります.
ラベル入力領域と折り返し翻訳
図4. ラベル入力領域と折り返し翻訳

(2) リアルタイム対応

後追い翻訳
単一言語の討論支援と多言語環境での討論支援で時間的に大きな違いとなるのが「機械翻訳にかかる時間」です.この機械翻訳にかかる時間の短縮を行うために「後追い翻訳」機能を用意しています.通常の折り返し翻訳は,翻訳が完了するまで待つ必要がありますが,「後追い翻訳」機能を使用することで,入力した文が翻訳されるのを待つことなくシステムに送信できます.この機能を使って送信された文は,その後自動的に翻訳されます.

4今後の課題

  • 討論内容の図解化の支援
  • 画像やPDFの外部ファイルの取り込み

学術論文

  1. 福島拓,吉野孝,喜多千草:共通言語を用いた対面型会議における非母語話者支援システムPaneLive の構築,電子情報通信学会論文誌,Vol.J92-D,No.6, pp.719-728(2009-06).

口頭発表

  1. 福島拓,吉野孝,喜多千草:対面討論における非母語話者支援システムPaneLiveの開発,情報処理学会,グループウェアとネットワークサービスワークショップ2008,pp.37-42(2008-11).

連絡先

リンク

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