1背景と目的

現在,様々な手法を用いて,在室管理に関する研究が行われています.在室管理は「誰が部屋に居るのか」を提示します.そのため,コミュニケーションを円滑にしたり,共同作業を支援したりする事が出来ます.

これまでの在室管理に関する研究では,「現在の在室状況の提示」を対象としています.そのため課題点として,「訪問者は目的人物が不在の場合,次の訪問日時が分からない」事が挙げられます. そこで本研究では,「未来の在室状況の提示」を対象とし,会えるタイミングを提示することによる訪問の支援を目的としています.

2Docoitterの概要

図1に本研究で開発した在室管理システム「Docoitter」の構成を示します.まず,研究室個人に割り当てられているPC起動の有無,無線ルータのARPテーブルの参照によって得た端末の物理アドレス,Google Calendarに登録されている予定を収集します.そして,サーバー上で現在の在室状況の判定と未来の在室確率の算出を行います.また,研究室メンバは現在の在室状況の変更と,コメントの入力をすることが出来ます.最後に,研究室の入口に設置しているタッチパネルディスプレイに現在の在室状況,未来の在室確率,入力されたコメントを提示します.

図1. システムの構成

3Docoitterの機能

Docoitterは「現在の在室状況一覧」「未来の在室情報」「在室状況の変更数」の3画面から構成されています.

(1) 現在の在室状況一覧

研究室メンバの在室状況をアイコンで表示します.図2に現在の在室状況一覧の画面例を示します.メンバの在室状況によって,5種類のアイコンで表示します.また,入力されたコメントの最初の3文字を表示しています.在室状況は「個人PC起動の有無」と「予定」から判定します.まず,現在進行中の予定があれば,「授業中」「予定中」と予定名を抽象化して表示しています.次に予定が無ければ,PC起動の有無で「在室」「不在」の判定をします.

図2. 現在の在室状況一覧の画面例

(2) 未来の在室情報

図2のメンバのアイコンをタッチすることで,そのメンバの未来の在室情報を確認することが出来ます.図3に未来の在室情報の画面例を示します.この画面では,現在の在室状況,入力されたコメントの詳細,未来の在室確率や予定を表示します.

図3. 未来の在室情報の画面例

(3) 在室状況の変更数

手動による在室状況の変更を継続的に得るために,在室状況の変更数に応じて,レベルと称号を提示しています.図4に,在室状況の変更数の画面例を示します.

図4. 在室状況の変更数の画面例

4未来の在室確率の算出方法

未来の在室確率は,「過去の在室割合」と「予定」を組み合わせて算出しています.図4に未来の在室確率の算出方法を示します.

  1. 過去に判定された在室状況から,「過去の在室割合」を求めます.「過去の在室割合」とは,今までに「在室」と判定した割合であり,以下の式から算出します.なお,本システムは曜日別に過去の在室割合を求めます.
  2. 「過去の在室割合」 = (「在室」と判定した回数) / (判定回数) *100
  3. Google Calendarから予定を取得します.
  4. 予定があれば,その予定を提示します.
図4. 在室確率の算出方法

5デモムービー

学術論文

  1. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: Docoitter:未来の在室情報を予報する在室管理システム, 情報処理学会論文誌, Vol.54, No.9, pp.2265-2275 (2013-09).

口頭発表

  1. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: 在室管理システムにおけるコメント提示機能の効果, 情報処理学会第76回全国大会, 第4分冊, pp.259-260 (2014-03).
  2. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: 利用者からの提供情報を用いた在室管理システムの評価, 平成25年度情報処理学会関西支部支部大会, E-12, pp.1-3 (2013-09).
  3. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: 利用者からの提供情報を積極的に活用した在室管理システムの開発, 情報処理学会, マルチメディア, 分散, 協調とモバイル(DICOMO2013)シンポジウム, pp.316-321 (2013-07).
  4. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: 未来の在室を予報する在室管理システムにおける推測手法の比較, 平成24年度情報処理学会関西支部支部大会, E-08, pp.1-3 (2012-09).
  5. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝: 未来の在室を予報する在室管理システム「Docoitter」の開発, 情報処理学会,マルチメディア, 分散, 協調とモバイル(DICOMO2012)シンポジウム, pp.1417-1424(2012).

受賞

  1. 田中優斗, 情報処理学会2013年度山下記念研究賞,未来の在室を予報する在室管理システム「Docoitter」の開発(2012).
  2. 田中優斗, DICOMO2012最優秀論文賞,未来の在室を予報する在室管理システム「Docoitter」の開発(2012).
  3. 田中優斗, 福島拓, 吉野孝,DICOMO2012最優秀論文賞,未来の在室を予報する在室管理システム「Docoitter」の開発(2012).

連絡先

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