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システムイメージ

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背景と目的

災害対策に地理空間情報の利活用は欠かせません.非常時に需要が高まるWeb地理情報は,公的機関や企業などが提供手段の検討を続けています.一方で,防災教育という指針においては,「逃げ地図」制作などの地域密接型イベントによる周知が行われています.参加者間のリスク・コミュニケーションを重要視する逃げ地図は,作業コストの肥大化や,情報の信頼性確保が課題に挙げられます.

そこで本研究では,デジタル上の逃げ地図作成を目的としたWebシステム「逃げシルベ」の開発を行っています.アクティブラーニングの促進を源流とする本来の逃げ地図の観点を尊重しつつ,遠隔の個人らに制作環境を提供することで,新しい逃げ地図制作の在り方を模索します.

逃げ地図

紙地図を用いて逃げ地図を制作する様子
図1. 紙地図を用いて逃げ地図を制作する様子

「時間避難距離地図」を正式名称とする「逃げ地図」は,目標避難地点までの時間を色鉛筆などで塗り分ける手づくりの地図です(参考:逃げ地図ウェブ http://nigechizu.com).図1に,逃げ地図を制作する様子を示します.

逃げ道の可視化ルール
図2. 逃げ道の可視化ルール

逃げ地図では,高齢者がゆっくり歩く程度の歩行速度を分速43mとし,3分間の歩行距離(129m)ごとに道路の塗り分ける色を変更します(図2).1本1本の道路の塗り分けが,危険な場所と逃げる方向の視覚的な理解につながります.

こうして制作された逃げ地図は,安全な避難方法の考案や,現場知に基づく語り合いを地域住民らに促します.本研究では,これらの地域ノウハウを永続的に記録し,多くの人々が閲覧できる逃げ地図システムの開発を目指します.

逃げシルベ

逃げシルベを用いて逃げ地図を制作する様子
図3. 逃げシルベを用いて逃げ地図を制作する様子

図3に,逃げシルベを用いた例を示します.逃げシルベでは,「道路の追加と自動色塗り」「避難所の設置」「浸水域の描画」「通行禁止の指摘」などの機能を利用できます.制作結果は,印刷して紙地図にしたり,他の利用者へ公開したりすることができます.

今後は,距離計測精度の向上と,多人数が協力し合える制作環境の構築を目指します.

口頭発表

  1. 谷岡遼太,吉野孝,江種伸之:避難時間を可視化する防災マップ作成Webシステムの開発,2017年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集, C-16,pp.1-5 (2017).

連絡先

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