[実施報告] 2025年度JICA課題別研修「中央アジア地域広域観光開発政策」
公開日 2025年11月20日
CTRで2023年度よりJICA関西より委託を受け、課題別研修「中央アジア地域広域観光開発政策」を実施しています。
※本課題別研修の詳細はこちら
本年もCTR研究員である八島 雄士教授(観光学部)、香月 義之教授(観光学専門職大学院)を中心に、中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)より省庁、民間企業、および高等教育機関の合計9名の研修員を受入れ、8月21日の遠隔研修から9月29日のアクションプランの発表まで、1ヵ月以上に及ぶ研修を実施しました。
8月の遠隔研修では、研修プログラムの概要説明に加え、研修員によるプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションでは各国の観光事情や課題を共有するとともに、本研修を通して学びたい内容についても述べられ、研修プログラムへの強い参加意欲が伺えました。
9月には研修員9名が来日し、和歌山大学での実地研修がスタートしました。実地研修の第1週目は観光庁、近畿運輸局、世界観光機関(UN Tourism)アジア太平洋地域事務所、和歌山市、株式会社Onwords、および本学教員による講義が行われ、研修員たちは世界および日本の観光の現状や課題、日本版DMO(観光地域づくり法人)の制度や仕組み、持続可能な観光への取り組み、またステークホルダーの連携事例等について学びました。質疑応答も積極的に行われ、時には研修員同士での白熱した議論に発展する場面もみられました。


本学教員による講義
研修第2週目はフィールドワークを実施し、高野町観光情報センターや田辺市熊野ツーリズムビューロー、南紀白浜空港を訪問しました。観光地経営や観光産業、地域住民を巻き込んだ取り組みなどについて実務者から直接話を聞くことで、第1週の座学で得た知識をさらに深めることができました。
また、高野山金剛峰寺や奥之院、熊野三山や那智の滝などの世界遺産を巡り、地元ガイドの解説を通じて、日本の伝統文化や神仏信仰についても知見を深める機会にもなりました。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」である熊野古道では7kmのウォーキングも行い、観光における安全性や観光資源保護の観点について体感するとともに、自国の観光においても取り入られる新たな視点が得られたとの感想もありました。


(左)高野山・根本大塔の見学 (右)熊野那智大社への道中
第3週目には、講義とフィールドワークで得た知識や経験をもとに、自国や中央アジア全体の観光における強みや弱みについて、グループワークを通して分析しました。また5カ国の観光連携事業の一案として、ツーリズムEXPOジャパンでの中央アジアブース展示案を研修員全員で考えるなど、今回の研修ではグループワークを多く取り入れました。
研修の一環として参加したツーリズムEXPOジャパンでは、日本や世界各国の展示ブースを訪れ、観光促進のブランディングやプロモーションを学びました。さらに、日本の旅行会社との面談も実施し、中央アジアの観光に関する現状や課題等、意見交換も実施しました。

グループワークの様子
最終週には、中央アジア5カ国における広域連携に関するアクションプランを国ごとに発表し、中央アジア5カ国連携観光開発を推進する施策を、短期目標と長期目標、および具体的な取り組み内容について発表しました。例年指摘されているインフラ整備や5カ国間でのアクセス面の課題はあるものの、5カ国が連携した取り組みとして5カ国を統括するようなDMOの設置など、新たな提案や意見が発表されました。
本研修は今年で3年目となりますが、今回からデイリーマネージャーという役割を設けました。この役割を通して、研修員ひとりひとりが責任と自覚をもって本研修に取り組み、研修員同士のつながりも一層深まったと感じます。当センターでは、今後も中央アジア5カ国における広域観光開発の一助となるよう、これまでの研修員や各国とのつながりを深め、情報交換できる体制を構築していきたいと考えております。


(左)最終発表 (右)閉講式

