2010年度特別展図録について
公開日 2010年12月13日
和歌山が生んだ「反骨の歴史家」の足跡をたどる
「百姓に歴史はあるのか」といわれ、忠臣賛美の皇国史観が支配していた第二次大戦下の歴史学界において、絵画史料・文学作品等を駆使して、民衆生活史や女性史を切り開いた先駆者・西岡虎之助。軍国主義による思想弾圧に屈しなかった西岡の研究業績は、現代の歴史学に大きな影響を与え、今日の歴史教科書の原型となった。
処女論文など和歌山師範学校(和歌山大学教育学部)在学中の史料を展示した2009年度企画展の反響によって、当研究所に寄せられた諸史料を公開する第1弾企画。熊野古道大辺路長井坂のスケッチ水彩画、東京大学提出の卒業論文正本、未刊行の著書原稿など、西岡民衆史学の成立過程を再検証する。
≪西岡虎之助 略伝(1895.5.17~1970、2.26)≫
和歌山県伊都郡見好村大字教良寺(かつらぎ町)の農家の次男として生まれる。三谷尋常小学校、同高等科をへて県立和歌山師範学校に入学。1916年処女論文「太田城水攻について」発表、卒業後四郷小学校・志賀小学校の教員となるが‘18年東京帝国大学史学科選科に合格して免職される。‘21年卒業論文「軍団制ノ崩壊ニ関スル研究」。東大史料編纂掛(史料編纂所)につとめ、‘54年早稲田大学文学部教授となり‘66年定年退職。『民衆生活史研究』で毎日出版文化賞、『荘園史の研究』で朝日賞。戦前・戦後を通じて、中世荘園史を中心に民衆史・女性史・社会史研究を貫いた「反骨の歴史家」として若手研究者に大きな影響を与えた。
頁数:全32頁
発行日:2010年11月15日
編集・発行:和歌山大学紀州経済史文化史研究所
印刷:中和印刷紙器株式会社
版型:A4版
≪目次≫
Ⅰ 和歌山の日々
1紀ノ川教良寺の里
2師範学校の明暗 コラム① 「卒論」太田城水攻について コラム②幻の自筆画
3訓導時代―研究と教育の葛藤
Ⅱ 民衆史学の出発
1異郷の帝都にて 2素顔の「反骨の歴史家」 コラム③『西岡先生追想録』の世界
3荘園史の研究 4早稲田大学の荘園絵図展
Ⅲ 自筆原稿にこめられた民衆世界
西岡虎之助原稿類一覧 西岡虎之助証書類一覧 和歌山関係論文一覧
コラム④民衆生活研究と民俗学(吉村旭輝)
Ⅳ 解題―西岡民衆史学の出発(たびだち)―(海津一朗) 年表・協力者一覧
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