光の特徴を上手に活かした情報処理とは

 

「光」という言葉からは「明るい(情報可視化)」,「速い(高速性)」,「カラフル(多波長)」というようなことを連想するでしょう.そのような「光」のもつ特徴を専門的に示したのが括弧内の用語です.これらの光の特徴を上手に活用し工学分野へ応用する研究が光工学です.光工学の数ある分野の中で,私たちは光の特徴を情報処理に活用する研究「情報フォトニクス」を中心に研究を行っています.


比較的身近なところにあるものを例にとって説明しましょう.「ホログラム」というものを見たことがあるでしょう.ホログラムは立体写真の一種で,見る方向を変えると写真の像の見え方が変わるというものです.ホログラムを光工学の立場から見ると光の振幅と位相の両方を記録したものということができます.両方を記録できることがとても大事で普通の写真では位相は記録できません.両方を記録できるという特徴を上手に活用すると,新しい世界が拓けてきます.例えば,大容量の光メモリDVDや次世代の光ディスクよりも多くのデータを記録できるホログラフィックメモリとして使うことができます.私たちは違法コピーから守ることのできる機能をもったホログラフィックメモリの研究を行っています.これは記録するデータに他の人にはわからない秘密の合言葉をこっそりと忍び込ませることによって実現しようとしています.


立体写真がいつでも手軽に撮れると楽しいに違いありません.しかし「ホログラム」を上手に撮るには時間と技術が必要です.私たちは手軽に(と断定するのはちょっとおこがましいですが)ホログラムを撮影できる手法の開発にも取り組んでいます.いわば「ホログラムカメラ」の開発です.単に立体写真が撮れるだけではなく,モノの変形などを測定することにも役立てることもできます.もちろん,実現には乗り越えなくてはならない困難がたくさん待ち構えています.もっとも,それらを少しずつ学生たちと一緒に克服していくことも研究者としての醍醐味の一つなのです.


本原稿は螢雪時代2006年4月臨時増刊 全国大学 学部・学科案内号に執筆したものを一部書き換えたものです.