終了【11/15(水)】第97回わだい浪切サロン「人と自然が共生した地域づくり~環境ビジネスに目覚めた中国と、お尻に火がついてしまった?日本~」
公開日 2017年11月15日
世界最大のCO2排出国の中国。その中国は,環境ビジネスのウマミに気づき,眠れる獅子はとうとう目覚めたようだ。温暖化防止/対策ビジネスは年間2,000兆円規模だとも言われるが,他の環境ビジネスまで含めると天文学的な金額になる。アメリカや日本が石油や原子力にしがみつき,環境ビジネスに参入せずにぼやぼやしている間に,中国は,着実に,環境ビジネスの世界シェアを増やし,環境と共生する地域づくり,国づくりの道を辿りながら,田舎まで豊かになりつつある。十数億人の行動は世界を大きく変える力がある。中国が「遅れた国だ」という理解は,もう古い。
本講演では,最新の中国の環境対策について紹介し,技術大国として先を走っていたハズの日本の「お尻に火が付いてしまった」状況を再認識し,日本がどのように進んでいけば地位を取り戻せるのか? 日本と地方の未来を考えるきっかけとなれば幸いと考える。
参加無料・申込不要
日 時 : 2017年11月15日(水)19:00~20:30
場 所 : 岸和田市立浪切ホール 1階 多目的ホール
話題提供 : 中島 敦司(システム工学部 教授)
開催レポート
参加38名
【概要】
「人と自然が共生した地域づくり」について、中国や各国の最新の環境問題について触れながら、和歌山大学システム工学部の中島敦司先生がお話しくださいました。
中国の水質汚染は、人として許せないという方がいますが、昭和51年の日本の霞ヶ浦の水質汚染とほぼ変わらないと、当時の写真がスライドに映し出されました。そして、発展途上国では、確かに環境問題はありますが、我々も同じ経験をしてきているのだから技術を提供し、皆が健康になれるようなアジア圏をつくっていかなければならないと話されました。
現在、ドイツのボンで開かれているCOP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)の話題が、NHKのニュースで取り上げられましたが、COPについて学生に尋ねると知らない学生が多かったそうです。
COP23の主要な話題は、海面上昇についてのことですが、海面上昇の一番の大きな原因は、温度による膨張であり、南の方は温度が高いので、水が上昇しやすいとのことでした。
また、COP21では、「パリ協定」が結ばれ、深刻な温暖化影響を回避するには、温度上昇を、産業革命以前と比べて、温度を2度以内に抑える必要があるとCOPでは強調されていると説明してくださいました。
国際公約で、2050年には、現在のCO2の80%を削減しましょうということが決められましたが、発電所のCO2をゼロにしても27%しか減らないという問題があるということです。
エディンバラ大学の地球科学科の研究チームは、樹木の年輪やサンゴ礁などあらゆる記録から集めた過去1,000年間の気候の変化を可視化し、太陽の活動変化や火山活動、温室効果ガスとの関連性を調査した結果、地表面の温度変化は太陽活動による影響をほとんど受けていないことを解明し、温暖化は人間活動から排出される温室効果ガス(主にCO2)が原因であると断定できる根拠を発表されたそうです。
地球温暖化による世界経済へのダメージは、「スターン・レビュー」によると、2040年には現在のGDPの20%が奪われるという結果になったそうです。COPでは、このようなことを防ぐため、各国が議論しているとのことでした。
地球全体としては富が奪われ、本来ならば、福祉や豊かになるために使うことができるお金が、温暖化対策のために使われてしまうので、温暖化予防は重要であると話されました。
福島第一原発事故の際、アメリカは、この原発事故からの回復には100年と5,000億ドル(約56兆円)の経費がかかると予測していましたが、日本は、当初の予測は200億円でしたが、1.8兆円→8兆円→13兆円→80兆円と、次々と上方修正しました。このことからも総じて、日本の原子力技術は、決して高いわけではないということや、このお金は国民が払っていくことなど、原発にはリスクがあるということを認識しなければならないと説明してくださいました。
また、COPにおいて、各国は、2030年までのCO2の削減目標を出しましたが、日本が一番低く、日本のような技術大国が何をしているのかと、世界中から苦言を呈されたそうです。
現状、日本は国として環境ビジネスにお金をかけているとは言い難いが、中国は環境ビジネスに多額の資金を使っており、中国が環境対策において遅れているというのは、30年前の話であり、現在は、とても進化しているとのことでした。
これからの日本の子供たちには、自然再生や環境教育により、環境は大事であることを伝えることが、とても大切なことであり、ほんの些細な環境配慮を自分たちの暮らしの中に取り入れることによって、温暖化にも対応していくことができることや、民(私たち)ができることを行うことがとても重要であり、民の積み重ねが国家の成果であると話されました。
数年前、「人と自然が共生した地域づくり」を進める指針として策定された「岸和田市生物多様性地域戦略2014」についても紹介され、実は、岸和田市は最先端の戦略を持つ自治体であることや、この内容を見て、正しく行っていくことで、COPで揶揄されるような日本と言わせないような街ができていくということを説明してくださいました。
地域の皆で、地域の環境を大切にすることによって、温暖化防止にもつながり、そして、一人一人が、自分の住んでいる身近な街や人を大切に思い、その街の良さに気づき生活することが、日本の未来を考えるうえで、とても大切なことであると今回のお話を通じて学ばせていただくことができました。
【アンケートより】
・地球温暖化の深刻が問題になっている中で、日本の最大の罪は、“国民の無関心”なのだなと痛切に感じました。自分に直接害が及ばない限りは、自分には関係ないと考える、それが我々国民の本性だということには耳が痛かったです。今日は知らないことがたくさんあって、大変勉強になりました。(20代・女性)
・世界から日本が環境の分野でどう見られているか、知らないで、関係ないと思っていたことが、どういうことだったのかが理解できて、とても分かりやすい内容でした。自分も何ができるか考えていきたいです。(30代・男性)
・COP23における日本の立ち位置を知り、ショックを受けました。“民”の力の積み重ねが“国家”の力という言葉が印象に残りました。自分たちに出来ることから温暖化対策を始めなくては。その前に、この現状を多くの人に知らせていかなければと思いました。(30代・女性)
・迫力のある話しぶりで、大変大事なお話をしていただき、ありがとうございました。日本では主流で伝えられていることが、データや写真を用いて説得力のある批判を加えられ、目の覚めるお話でした。環境科学から社会経済システムまで、幅の広い、中身のあるお話を本当にありがとうございました。私たちの普段からの暮らしの見直しを考えさせられるお話、また聞くことができればと思いました。(40代・男性)
・すごいお話だった。私も日頃何も理解せずに生活していた。今日は出席して本当に良かった。(80代・男性)
(前回)第96回「植物の機能とヒトの知恵」(開催レポート)
(次回)第98回「スポーツツーリズムと関西ワールドマスターズゲームズ」(予告)