【レポートup!】第42回「スマートフォンで変わる!生活の情報化」
公開日 2012年05月18日
日時: 平成24年5月16日(水)19:00~20:30
話題提供者: 塚田 晃司 (システム工学部准教授)
場所: 岸和田市立浪切ホール4F研修室1
★申込不要、参加無料です。
この数年でスマートフォンが急速に普及し、これにともない、ふだんの生活の情報化も進んでいます。
今回は、スマートフォンと従来の携帯電話との違いや、具体的な活用事例について解説します。
Twitter や Facebook、 Foursqure といったソーシャル・メディアを用いた日常生活での情報交換から、3.11東日本大震災のような非常時の安否確認などの情報交換まで、幅広く解説します。
また、情報通信技術の災害時における活用事例と課題、大規模災害に備える最近の研究動向などについても解説します。
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【ダイジェスト・レポート】
■はじめに
私は、民間企業でグループウェアやIP電話などの研究開発に携わってきました。和歌山大学に来てからは、防災研究教育センターにも所属して、それまでの研究を防災に役立てる研究もしています。本日は、スマートフォン(スマホ)の使い方だけでなく、災害時の情報通信についてもお話したいと思います。
■スマートフォンとソーシャルメディア
一昨年あたりから、スマホが急速に普及しました。調査によって差はありますが、スマホのユーザーは携帯電話ユーザーの約2割です。世代別では若者への普及率が高く、20代の約4割がスマホのユーザーです。40・50歳代のユーザーも増えており、いずれスマホの利用者数が従来の携帯電話の利用者数を抜くと考えられます。
スマホとは、「個人用の携帯コンピュータの機能を併せ持った携帯電話」、つまりPCを携帯サイズにして持ち歩いているものといってよいでしょう。スマホのほかに、フィーチャーフォン、ベーシックフォンという分類があります。ベーシックフォンの通話機能、フィーチャーフォンのカメラ機能やGPS機能に加えて、スマホにはブラウジング機能がついており、PCと同じようにインターネットにアクセスしてホームページを見ることができます。従来のiモードと違う点は、直接インターネットにつながることです。そのことでより多くの情報にアクセスでき、様々なアプリ(ゲーム、乗り換え案内、音楽など)の利用も可能です。
最近、スマホを使ったソーシャルメディアの活用が話題です。ソーシャルメディア(ツイッター、フェイスブックなど)とは、友達づきあいのような社会関係をネットワーク上にもってきて、情報をやり取りしようとするものです。スマホのメリットは、持ち歩けて、その場で情報を受発信できるところにありますから、スマホの普及とソーシャルメディアの関係はとても密接です。現在、ソーシャルメディアの利用率は携帯電話ユーザー全体の5割くらいですが、スマホユーザーのソーシャルメディア利用率は7割と高くなっています。
■災害とネットワーク
災害とネットワークについて考えるうえで、阪神淡路大震災の時と昨年の東北大震災の時のネットワーク環境には大きな違いがあります。平成9年のインターネット人口普及率は9.2%でしたが、平成22年は78.2%にまで増加しました。携帯電話加入数は、平成6年に433万だったのが、平成22年は11953万です。今回の大震災は、このようにネットワーク環境が変化してきたなかで起きました。
災害時、電話に比べてネットはつながりやすいと言われてきました。状況にもよりますが、一般論としては避難場所や被災状況の情報発信などにインターネットは有効です。では実際に3.11ではどうだったのか。岩手、宮城、福島の被災地住民に「役に立った情報源」を聞いたところ、インターネットという回答は少なかったです。地震直後は電力と通信が断絶していたためです。反対に情報源として役に立ったのがラジオです。乾電池があれば使えますし、カーラジオの利用も多かったようです。災害時の問題として、まず電話がつながりにくくなります。また、地震や津波で通信装置が故障する、停電する、自家発電機を動かす燃料が枯渇するといったことがあります。携帯電話は無線だから大丈夫とは言えず、電力や装置が使えなくなると駄目になります。停電した場合の基地局のバッテリー稼動時間は長くても1日くらいしかありません。また、電話会社側の設備が無事でも、携帯電話の電池切れも致命的です。従来の携帯電話は通話しなければ数日はバッテリーが持ちますが、スマホは1日で切れてしまいます。予備のバッテリーや手動の充電装置などを用意しておく必要があります。
■非常時通信
災害時に通信を確保するための研究も進んでいます。山間地が多い日本では、災害時に孤立してしまう集落がたくさん発生しますから、平時の通信が使えなくなったときに、いかにして外部と情報をやり取りするかが課題です。いろいろな通信手段が提案されていますが、単一の手段に依存することは危険であり、複数の通信手段を用意しておくことが大切です。昔ながらの手段として狼煙も有効ですし、地面にシートを敷いて文字を表示するといった方法もあります。衛星携帯電話や超高速インターネット衛星などのハイテクもありますが、これらはコストがかかり、運用には資格が必要です。技術的には優れているが、いざというときに住民が手軽に利用できないと意味がありません。
そうしたなか、アドホックネットワークという技術が注目されています。電波の届く範囲内で、その場かぎりの臨機応変なネットワークを築く技術です。東日本大震災の時には、大船渡市などでアドホックネットワークを使って避難所内のネットワークを実現する事例もありました。
地面に字を書く方法は、上空を飛行するヘリコプターに地上の要求を伝える手段として実際に使われています。文字の書かれたシートを避難所ごとに用意している自治体もあります。東日本大震災のときも、病院の屋上や学校のグランドでこうした方法が使われました。原始的かつローテクですが、有効な手段です。
ただし、昼間はいいですが、夜間は見えません。そこで私たちの研究室では、ローテクとハイテクをあわせて、可視光(LEDの発光)を用いた非常時通信の研究にとりくんでいます。光なので特殊な受信機がなくても受信できます。また、モールス信号のように光にメッセージを乗せて発光し、専用の装置を用いてそのメッセージを読み取ることもできます。今後、こうした方法がスマホを使っても進むと思います。