【開催レポート】「18歳からの一票」(第3回):ディベート編
公開日 2016年11月27日
第3回開催レポート
テ ー マ 「政治の争点なんて知らんし!ほんまそれな!」
日 時 11月27日(日) 13:30-16:30
場 所 岸和田市立図書館
アドバイザー 越野章史先生(和歌山大学教育学部准教授)
当日参加は、6人。内訳:高校生4人 大学生2人
会場は、前回(9月25日)に引き続き、岸和田市立図書館にご協力いただきました。
第2回のプログラムでは、「情報収集をどのようにするのか?」を考え、体験しようということで、「憲法改正」をテーマに高校生・大学生に取り組んでもらいました(詳しくは、「第2回開催レポート」をご覧ください)。
今回は、プログラムの最終回として、第2回の経験をもとに、「憲法改正」についてディベートを行いました。
ディベートの様子。写真左側が、反対派、右側が賛成派グループ。中央は審査団長。
「ディベート」は、テーマについて、賛成・反対の立場になって、それぞれの主張を述べ、競い合うものです。
今回は、次のようなスケジュールで進めました。
【スケジュール】
①チーム分け(憲法改正に賛成・反対の立場から)
②作戦会議① 各グループで主張を考える
③ディベート① 各グループの主張
④作戦会議② 主張に対する反論を考える
⑤ディベート② 主張への反論
⑥作戦会議③ 再反論を考える
⑦ディベート③ 再反論
⑧審査・講評
単に相手を言い負かすのではなく、前回のプログラムでの経験を踏まえて、憲法改正をめぐって賛成派・反対派が、どのような内容の主張をし、なぜそのように主張するのか、その主張は説得力のあるものなのか、などを考え、論戦してもらうことをねらいとして実施しました。
グループごとにアドバイザーの先生たちと念入りに作戦会議をする様子
それぞれの立場から主張し合う大学生と高校生
限られた時間の中で、グループで主張と作戦会議を行き来してもらい、大人たちにはどちらのグループがより説得力のある主張を展開していたか、審査・講評の役をしてもらいました。
具体的にどのような論戦が繰り広げられたのかは、長くなってしまうので割愛しますが、結果的には、反対派グループが点数の上では僅差で勝ちました。しかし、実際はほとんど差はなく、審査・講評のために使用した評価シートのコメントを読んでみてもそのことがわかります。
評価のポイントとしては、主張の仕方や主張と根拠の整合性など5つの観点からそれぞれ10点ずつ、計50点満点で点数をつけてもらいました。
また、上述したように、単なる勝った、負けたで終わらせないために、論戦を通じての感想や意見、助言なども記録してもらいました。
審査の様子 審査の結果と講評を伝えている様子
【評価シートのコメントの一部】
●憲法改正賛成グループへ
1.意見が明確であり、ディベートの始まりから、論点を整理し、相手に分かりやすく伝えようとしてきた点が非常に良かった。
2.3人が仲よく笑顔で話し合っているのが良かった。自民党の改正案だけではなく野党の案の必要性ありと話されているのが良かった。相手側の主張の良い所をみつけることも大切だと思った。
3.現状から歴史まで、短い時間の中でよくリサーチできていると感じました。
ディベートに関しても、自分の主張とは関係なく議論していただいたのにも関わらず、説得力のある説明ができていたと思います。
自分が考える立場とは違う立場で考えることによって、自分の主張の反対派が何をどう考えているのかが見えてくるので、考え方が変わることや、自分の考えを補強することに繋がっていくと感じました。
4.変えたらこういうことになるというメリットをアピールできたら良かったと思いました。
主張を3つに絞っており、とてもわかりやすかったです。
5.ポイントを絞って主張したのが良かった。
●憲法改正反対グループへ
1.ディベートの始まりでは、論点が整理されていないイメージであったが、作戦を重ねるごとに、ブラッシュアップされ、根拠を示しつつ、反論することができた。短時間で資料(情報)収集をうまく分担し、それを根拠にできた点はすばらしい。
2.最終ディベートでは、(1人だけでなく)2人の主張とまとめがあったので良かった。相手の主張の良い所をみつけることも大切だと思う。
3.自分たちの主張をわかりやすく相手に伝えることができたいたと思います。
4.反論に対して、ひとつひとつ丁寧に調べられていたと思います。
反対という立場なので、相手の心情に訴えるような方法も有効なのかなと思います。
5.多面的に対応しようとしている姿勢が良かった。
この日のスケジュールを終えて、越野先生から最後のまとめのコメントを次のようにいただきました(抄)。
今回は、ディベートを賛成・反対のグループに分けました。それぞれに意見がある人もいる中で、自分の意見とは逆のグループになった人もいたと思います。
ディベートをする中で、意見が変わって、なんとなく所属したグループの意見の方になってしまった、という人もいるかもしれませんが、今回のディベートだけで判断せず、より深く関心を持ちながら考えていってほしいと思います。
・・・意見が様々ある日本の自衛隊がPKO(南スーダン)へ参加することや、アメリカの大統領選の結果、沖縄の基地の問題など、政治にかかわる大事な問題があります。今、日本の社会も、世界全体で見ても、大きな曲がり角を曲がりつつあるときではないかと思います。そういう曲がり角を完全に曲がり切ってしまった後で、後から「そんなこと知らなかったよ」と後悔するようなことにはなりたくないと思っています。私も含めて、みなさんもこれをきっかけに政治的な事柄にこれまで以上に関心を持って、自分だけでなく周りの人と少しずつ話せるような関係をつくっていただければありがたいと思います。
そして、最終的に私たち市民が、政治のあり方というものを動かすようになっていくのだと思います。みなさん、お疲れさまでした。
最後にコメントする越野先生
1年間を通して、3回のプログラムを実施してきました。
高校生も大学生も今回のような取り組みは、大半が初めての経験で、どうしたらよいかわからない場面をあったと思います。
それは、企画した大人たちも同じで、どのような内容で、どのように進めていくべきなのか、細かいところにも注意を払いながら、手探りの中で進めてきました。
そのような中でも、多くの方のご協力と高校生・大学生の積極的な参加でより良いものになってきたと思います。
ご協力いただいたみなさんありがとうございました。
この1年間の取り組みは、来年2月11日の岸和田サテライト10周年フォーラムでサテライトの活動報告として発表を予定しています。
詳細は、サテライトのHP等でお知らせいたします。
■最後に、今回プログラムに参加した高校生・大学生の感想や意見などを一部紹介します。
・選挙へ行ってほんとうに私たちの意見が反映されることになるのか、という疑問はぬぐえないければ、憲法改正を含む政治的な話題に興味をもつきっかけにはなった。
同時に、日本人は政治に対しての興味がかなり薄いのではないかという危機感を抱くようにもなった。
・あまり政治の話について触れる機会はないので、良い経験となった。今まではなんとなく新聞を読んだりニュースを見たりしていたので今度からはしっかりと考えながら読んだり、見たりして自分の意見がどのようなものかを考えていきたい。今回のディベートで、自分の主張を言うときに、しっかりとまとめていたにもかかわらず思っていることを全て論理立てて言うことができなかったので、これからは普段から自分の意見について考えていきたい。
・何も考えず問題点があるなら憲法を改正すれば良いと考えていたが、過去約70年にわたって一定の成果をあげている現日本国憲法を新日本国憲法に改正するのではなく問題の部分を拡大解釈などして、部分、部分で変えていくのが一番リスクの少ないやり方だと思いました。
・今までも思っていたことであるが、やはり憲法は改正されるべきだと思う。しかし、単に自民党の草案だけを見るのではなく、様々なものからもっと学習し、広い視野から考えていく必要性を感じた。
・憲法改正はするべきだと思うが、自民党の憲法改正案だけでは不十分だと思った。他の党ももっと案を出すべきだと思う。