終了【4/19(水)】第91回わだい浪切サロン「新学習指導要領で英語教育はどうなる?どうする?」
公開日 2017年03月16日
日 時 2017年4月19日(水)午後7時~8時30分
場 所 岸和田市立浪切ホール1階多目的ホール
話題提供 江利川 春雄(教育学部教授)
英語が使える「グローバル人材」育成を旗印に、2017年告示の新学習指導要領は小学校3年生からの外国語活動の導入と、5年生からの正式教科化を盛り込んでいます。
しかし効果は疑問視されており、教員研修の不備など問題山積です。中学・高校では英語の授業を英語で行い、単語数も急増するなど、英語嫌いの増加が懸念されます。
また、生徒同士が能動的・協同的に学び合うアクティブ・ラーニングの導入が打ち出されており、講義・解説型授業をいかに転換するかが問われています。
講演では、英語教育の最新の動向と各地の実践を紹介し、平等と協同の原理で子どもたち全員を伸ばす「豊かで楽しい外国語教育」をどう実現するかを共に考えたいと思います。
開催レポート
参加者65名
【概要】
2020年からスタートする新学習指導要領では、大幅な改訂がなされました。
なかでも、今回は、英語教育においてどのような改訂が行われたのか、江利川先生よりお話しいただきました。
次期学習指導要領の特徴は、従来の指導要領が「教育内容中心」だったのに対し、①指導法(アクティブラーニング)+②評価法(パフォーマンス評価)+③授業内容管理(カリキュラム・マネジメント)までも一体化させており、大きく変わってきているといいます。
今回の改訂は、現場にとって大変な変更だと指摘されます。
学校段階別でみると、小学校では「外国語活動の早期化・教科化」、中学校では「語彙の増加・文法事項の追加・授業は英語で行うことを基本とする」などの変化がみられます。
小学校では、早期化・教科化が目指されますが、入門期の英語指導が最も難しいにもかかわらず、英語免許を持つ小学校教員が現員の5%しかおらず、英検準1級程度以上の保持者は0.8%という状況です。教科化すれば、高学年で全国8万学級分の教員研修が必要ともいわれる中で、英語指導できる教員が十分に確保されていないといいます。
また、現職小学校教員の多くが英語指導に「自信ない」と答えているとのデータもあります(ベネッセ教育総合研究所(2017)「第6回学習指導基本調査」)。
中学校においては、語彙の量は従来の約2倍になるとされ、文法事項も理解の難しい文法が追加され、授業は英語で進める内容となっています。
いずれも、このままでは「英語嫌い」を加速化させてしまうのではないかという心配があると言います。
歴史的に見ても、明治時代に小学校での英語教育が進められましたが、十分な成果を得られず、母語(国語)を鍛えることが重要だとの指摘がその頃からすでにありました。
多くの課題があることが指摘される新指導要領ですが、では、それにどう対応していく必要があるのか。
江利川先生は、代案として、子ども同士が学び合う協同学習を取り入れていくことをすすめます。
協同学習とは、
① 教師主導の教え込みから子ども同士の学び合いへ
② 異なる他者を尊重し合う「民主主義の学校」
③ 競争と格差に抗し、平等と協同で全員を伸ばす
ことを目指すものです。
子どもたちが学び合う状況を教師がつくっていくことで、子どもたちの人間関係性をより良くしたり、教師自身への負担を軽減したりすることが期待されます。
これらを活用しつつ、新学習指導要領に対応していくことを提案されました。
盛りだくさんの内容でしたが、あっという間の時間でした。
【アンケートより】
・今日は大変勉強になりました。上位1割のための指導要領に振り回されないように10割の子どものためになる授業づくりを研究していきたいです。またぜひ岸和田でご講演下さい。(50代・女性)
・盛り沢山な内容でした。単に英語を学ぶ(教える)のではなく、「英語学習を通して、何を学ぶ(教える)か」の視点が貫かれていて、教育者としての江利川先生の熱い思いが良く伝わりました。学校の先生ではない一般の人や保護者にとっても、現在の学校教育について考えるよい機会になったと思います。(50代・女性)
・今日のお話を聞かせていただいて、教育指導の現状やデータなど分かりとても勉強になりました。指導や学習にかんしても細かく教えてくださり、私自身のためにもなりましたし、これから将来教職になるにあたっての励みにもなりました。今日はご多忙の中、本当にありがとうございました。(20代・男性)
・大変良かった。小学英語に英語の歌を歌わせるのを取り入れたらどうか。(70代・男性)
(前回) 第90回「稼げる中小企業のための『管理会計』
(次回) 第92回「音をとおして関わる-音楽療法が私たちに気付かせてくれることー」