【開催レポート】第8回ワダイノLIVE@Kishiwada「今を生きる子どものこころ ~不登校児童・生徒支援~」
公開日 2025年05月16日
開催レポート
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話題提供者| 中川 靖彦(なかがわ やすひこ)氏
和歌山大学 教職大学院 教授 -
開催日時| 2025年4月16日(水)19:00〜20:30(開場 18:50〜)
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開催方法| 岸和田市南海浪切ホール
①対面参加 ②オンライン同時配信(ハイブリッド開催) -
参加者数| 会場:15名 オンライン:28名 合計:43名
■ 講演内容のご紹介
長年の学校現場やスクールカウンセラーとしての経験をもとに、不登校児の支援についてお話しいただきました。講演では、多様化する価値観の中で子どもたちの心に寄り添い、「聴く」姿勢を持つことの重要性が説かれ、学校教育は子どもの感情の成長を支える場であるべきだと強調されました。また、支援者が一人で課題を抱え込むのではなく、社会全体で包み込む視点が求められることも述べられました。
■ 参加者の声(一部抜粋)
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「ハードルが上がるほど悩みが増える”とても共感しました。全ての悩みに言えることだと思います。感情のコントロールが必要な職場なので、肝に銘じておきます。」
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「穏やかでわかりやすいお話しでした。子どもたちの心をみるためには、それを受けとめることが大切で、そのために自分の心を大切にすることが重要であると分かりました。ありがとうございます。」
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「非常に良かったです。講師の力量と誠意を思いました。」
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「今回のお話は、その重要な部分を論題に取り上げておられ、まさに、我が意を得たり、と感じることが多かった、と思います。私は、小学校、中学校で、笑顔で挨拶し、各生徒の顔を注視しつつ、「今日も笑顔で元気よく‼️」と声をかけています。大人は子どもたちを元気に、意欲的にする責任があると思っています。相手の気持ちを大切にし、その時々に応じて、兎に角、相手が元気になり、自己肯定感が上がり、幸せ感を感じるよう、これからも尽力したいと思っております。」
■ 中川先生からのメッセージ
多くの皆様にご参加いただき誠にありがとうございました。かつての学校教育は、不登校の子ども達の支援を考える時、「なぜこの子は学校に来ないのだろう?」という視点で捉えてきました。しかし、現代の学校教育においては、「こんなに価値観が多様化し社会が変化しているのに、それでもなぜ子ども達は学校に来るのだろう?」という視点から問い直してみなければならない時代になっていると感じます。VUCAと呼ばれる変化の激しい先が見えにくい社会において、それでも毎日登校してくる子ども達にとっての学校とは何なのか、今一度、子ども達の視点に立ち、感情のそだちの水準から教育を考え直す必要がありそうです。
私は、本学の学生や教育現場の先生方には、いつも“聴く”ことの大切さを伝えています。自身の信念や経験知は重要ではありますが、それに固執することなく、柔軟性をもち、目の前にいる子どもの声に耳を傾け、丁寧に見立て、どこまでも理解しようという姿勢をもって支援を続けることが大切だということです。
不登校児童生徒35万人の時代において、これからの学校教育の在り方を考える時、子どもたちの心の声に耳を傾けるカウンセリングという手法は一つの手がかりになり得るのではないかと強く感じています。
■ ここが言い足りなかった(補足)
子どもに限らず、人の心に寄り添った支援をするというのは、実に大変な営みです。ものすごく精神的にも体力的にもエネルギーがいることです。そのうえ、心をあつかうということは、目に見えないものを対象にすることですので、曖昧で時に矛盾を抱えるはっきりしないものと対峙し続ける支援者の姿勢が問われます。大切なことは、支援者が一人で課題を抱え込むことなく、チームや組織、さらには社会全体で包み込むという視点を忘れないということではないかと感じています。
■ 参加者からの質問とその回答
Q:感情を抑えこむ癖がついている子への対応はどうしたらいいでしょうか?
A:「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」等、まずは周囲の大人が挨拶や適切な感情表現を続け、本人が安心できる環境づくりを図ることが大切です。家族や先生という人はとても大きな教育環境の一つです。そのうえで、本人の変化を急かすことなく待ってあげられること。さらに、年齢や状況にもよりますが、絵や文章・遊び等での表現ができるのであれば、そういった言語表現以外の表現型も大切にしてあげることが変化につながる場合も多いです。
Q:不登校日数の長さ等、子どもの実態に応じた支援をするにはどうすればよいでしょうか?
A:家は出られるが教室には入れない子どもを対象とした支援として、教職員が空き教室等で支援をする「別室登校」が盛んに行われてきましたが、専任の支援員を配置する「校内教育支援センター(校内サポートルーム)」を設置する自治体も増えてきました。また、学校に足が向かない子どもには、校外に設置した「教育支援センター(旧:適応指導教室)」や民間の「フリースクール」の活用、さらには不登校児童生徒支援に特化した「学びの多様化学校(旧:不登校特例校)」を新設する自治体もあります。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置も進んでいますので、活用されることも良いと思います。不登校の子どもたちの支援は、個別性の高い課題ですので、当該の学校や自治体の相談窓口等との相談や連携が、入り口としてまずは重要ではないでしょうか。