WHO'S WHO 研究者紹介

障がいのある子どもとその周囲をサポート。誰もが幸せに暮らせる社会へ

特別支援教育の未来を見据える、竹澤大史准教授の眼差し

教育学部 教職大学院 准教授

竹澤 大史 TAKEZAWA Taishi

客観的な評価による問題解決、子どもの得意を伸ばすアプローチ

 特別支援教育を専門とする竹澤准教授の研究は二本柱。一つめの柱である、子どもを対象とする研究では、主に「発達障害」を扱う。発達障害の特性の現れ方は人それぞれで、中には身の回りのことや勉強はできるが、社会性やコミュニケーションに苦手さがある子どももいる。

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 こんな例がある。小学校の特別支援学級で、友だちとの関係をうまく築けず、授業に参加できない子どもがいた。教師から相談を受けた竹澤准教授は「その子どもに対して行動観察などアセスメント(評価)を実施してみると、社会性やコミュニケーションに苦手さがあることがわかりました。その評価を教師の方と共有し、授業の中でソーシャルスキルトレーニングに取り組んでもらいました。授業では、友だちとのやり取りについて、教師がモデルを示したり、具体的な声のかけ方を練習したりします。その結果、友だちとの人間関係を少しずつ築けるようになり、授業にも参加できるようになりました」と語る。

 ただ、このような対応がすべてではない。「子どもの苦手分野を見つけた教師は、集中的に指導しがちですが、子どもに負担をかけることもあります。得意なところを伸ばすよう指導するほうが、子どもの力全体が底上げされ、結果的に苦手分野も解消できることもあります」と教育の奥深さを語る。

 このような研究活動だけでなく、竹澤准教授は学生と接する時間も大切にする。「真摯に学ぶ学生は、初心を思い出させてくれる存在。学生への研究指導を通して、新たな視点やインスピレーションも得られます。」とその理由を語った。

家族に寄り添い、支えるためにペアレント・メンター養成に注力

 竹澤准教授は、研究の二本目の柱である家族へのサポートにも力を入れる。その一環として、ペアレント・メンターの活動への支援に関わっている。ペアレント・メンターとは、障がいのある子どもを育てた経験のある人たちによる活動のこと。子育ての支援や相談に関する一定の研修を経て、自らと同じ境遇にある親たちに体験談や地域の役立つ情報を提供する。

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 竹澤准教授は「前職で『発達障害のある人の親の会』の方々と出会い、この活動について知りました。その後、研究者同士でペアレント・メンター研究会を立ち上げ、調査研究や活動支援を行っています」と経緯を話す。「ペアレント・メンターの方にはご自身の経験をもとに助言していただくこともありますが、決して問題解決を目指すわけではありません。専門家と異なるアプローチで他のご家族の支援に関わっていただくことが大切です」と竹澤准教授は強調する。

地域や国を超えた連携でチームを組み解決の糸口を探る

 研究は国内のみにとどまらず、海外まで範囲を広げている。ベトナムと継続的に交流してきた竹澤准教授は、ベトナムの特別支援教育に関する論文を執筆。日本の研究者・教員が関わり、立ち上げた特別支援教員養成プログラムの経緯と内容について説明し、評価を得た。

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 特別支援教育の研究に携わるやりがいを竹澤准教授はこう語る。「教育現場で子どもや家族と接することで、『こういう考え方もあるのか』『これはまだ調べられていないのでは』という新たな発見、気づきがあり、研究したいと思うアイデアも次々に見つかります」

 竹澤准教授は、この問題を解決し大きな成果を得るには、多方面でチームづくりに取り組む必要があると考える。教育に限らず、家族への支援や福祉などを共にバックアップできる仲間との連携を目指し、道を探っている最中だ。「国や都道府県だけでなく、市町村などより身近な地域で協力関係を形成しつつ、海外の識者とも問題を議論したい」と、理想の実現に向けた思いは尽きない。

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Profile プロフィール

竹澤 大史 TAKEZAWA Taishi

和歌山大学着任 2017年
学歴 滋賀大学 大学院教育学研究科〜Indiana University Graduate School, School of Education, Doctoral Programs
学位 Ph.D.
研究キーワード 発達障害/早期療育/家族支援

「特別支援教育を通じ、多くの方々と共に成長できるのが喜び」

母が特別支援学級の担任だったため、幼少期から障害のある子どもと接する機会がありました。大学で学ぶうちに特別支援教育には教育の基本やエッセンスが詰め込まれていると

感じ、大学院では特別支援教育を専攻しました。特別支援教育の研究では、子どもや保護者の方、そして教師や支援者の方々とお互いに学び合えるのがやりがいです。子どもとそ

の家族が充実して暮らせる未来を作る方法を、あらゆる方向から探っています。