WHO'S WHO 研究者紹介

五感のガジェット

~おこづかい研究のススメ~

目の前にあるリアリティと、
脳で感じるリアリティの邂逅
最先端のネットワーク研究の現場から

科学が輝いた80年代を知る社会情報学の研究者が語る、
実は和歌山大学が得意な燃費がいい研究の魅力・実力!
大きな研究費が必要な分野でなく、
俗に“ガジェット”と呼ばれるような分野でも、
未来を切り開く研究はできる。
1995年の設立当初から“融合の時代”を先取りしてきた
和歌山大学ならではの「やってみたい」を進めよう!

システム工学部(教授・学部長)

宗森 純 MUNEMORI Jun

デスクトップを捨てよ、外へ出よう!

ニューラル・ネットワークが導いた未来へ
「板型パソコン」と、消え去った数十件の特許

79年、今ではディープ・ラーニングの父と呼ばれる福島邦彦が人工神経回路モデル「ネオコグニトロン」を発表し、81年にはヒューベルとウィーセルが視覚情報の処理に関する発見でノーベル賞(生理学・医学)を受賞した。脳科学や神経科学の発展に伴い第二次AIブームが到来した時代に、研究者の道を歩き始めた。電機会社に入社したのはインターネット勃興期。UNIX(現在のLinux原点)のワークステーションという"産業革命"を経て動き出した電子交換機のシステム開発最前線で、ネットワークに実際に触れた。

20年に一遍くらい、未来を見てきた気がする。ネット社会? 電話でなくメールの時代?「うっそ~、ならないよぉ!」と叫びつつ、89年には持ち運べる『板型パソコン』を考案。画面の大きさ不足を補うために2台を連結させる手法など、数十件の特許を出願する。やがて2010年になって、iPadが登場した。

プログラムが当たり前の時代こそ、手探りで
"システム"は"工学"の垣根をも越えて

90年代に大学へ。スマホの前身となった安価なPDA(個人用端末)に興味を持ち、01年に「高額な機器がなくても10万円で論文が書ける!」と呼びかけたが、"ガジェット"研究への賛同者は少なく......結果、日本はスマホ研究から遅れてしまった。

遊びは好きでもコンピュータゲームは苦手だったから、実際に身体を動かし体感しながら使うアプリが好き。学生たちにも研究室にひきこもってほしくなくて、GPSで外へと誘導している。『Pokémon GO』より早すぎた電子鬼ごっこ風のアプリは、20年の時を経て今、学部生がキネクトを使って研究中。「チームラボより凄いよ」と笑う。

ただ、ゲームの面白さはゲーム会社に任せて、作りたいのは新しい機能だ。90年代にデジカメ標準時代を予見し、09~10年には動画システムも作った。今ではそれら機能とともにあらゆるセンサーを搭載しているスマホの便利さに感嘆する。そう、ソフトウェアは役に立つものだ。

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Profile プロフィール

宗森 純

宗森 純 MUNEMORI Jun

和歌山大学着任 1999年-2021年3月
学歴 東北大学 工学研究科 電気及通信工学
学位 博士
所属学協会 人工知能学会、ACM、IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会
研究キーワード モバイルコンピューティング、グループウェア、発想支援
特許 発想支援装置、発想支援サーバ、および発想支援方法(2014年)

1955年、大阪生まれ。81年に名古屋工業大学大学院工学研究科修士課程、84年に東北大学大学院工学研究科博士課程を修了後、三菱電機株式会社へ。

89年より鹿児島大学工学部助教授、96年より大阪大学基礎工学部助教授を経て、99年に和歌山大学システム情報学センター教授・副センター長に。

以後、システム工学部デザイン情報学科学科長、システム情報学センター長、和歌山大学評議員を歴任、17年より現職。

「実際に身体を動かしたい」の言葉どおり、学内ではいつも駿足移動!